ゲーテ

 人間界の話。ゲーテは悪魔と契約した。

 彼は愛を持って「愛することも悩むこともやめた人間は死んだほうがいい」と言い放った。

 悪魔の知恵かもしれないといぶかりながら。

 ゲーテは地獄に落ちて、色々な悪魔を見やった。ゲーテが契約した悪魔は悪の権化だったかもしれない。人間界にいる時、ゲーテは自分が悪魔だと認識した。

 地獄で優雅にワインを飲みながら前世の政治のことなど考えていた。もっとよりよい政治にするために、自分が畏怖とならなければ。そう願った。

 実際に悪魔になって思ったことは、人間は結構愚かでありながら、良識を持っていることだった。もう後戻りはできない。ゲーテはそう思いながら、知恵を振り絞る悪魔の仕事をこなしていた。

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