なあじいちゃん

 なあじいちゃん。

 戦争で生き残った気持ちってどうなのよ。

「案ずるな。今の時代、日本は戦争なんか起こさん。ある意味賢く、ある意味愚者である総理大臣しかいないからな」

 太平洋戦争って、天皇万歳って言ってみんな死んでいったんでしょ。

「違う、きみたけ。日本の兵隊はな、お母さん、お父さん、ごめんなさい、って言って死んでいったんだ。天皇はな、確かに偉いかもしれないが、天皇のことなんか考えてる暇なんかねえってば。空襲が来れば、B29のエンジン音に怯え、学校の配給では、靴下の奪い合いだ。そんな中でも必死に子供を守ろうとしたのが親だ。天皇じゃあない。お母さん、お父さん、ごめんなさい。そう言って、兵隊はな、死んだんだ」

 僕は何も答えられなかった。ただおじいちゃんの真剣な眼差しは真実を語っていた。そう確信を得るものがあった。

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