魔王よ
花々が枯れてゆく 魔王よ
俺の双手に悪が宿る
俺の画布には醜悪な図が
黴のように犇めく
恋人よ 肺病みの恋人よ
短刀を持って俺の胸を刺してくれ
そして殺してくれ
俺は美しく死ぬ 枯れてゆく
闇は俺を魅惑する 堕落だ
放火 殺人 強盗 悪者は蛇だ
悪徳でしか己を表現できない
それは魂が鮮烈で尚且つ腐っている
ゴミ溜めの人間がごちゃごちゃいる
そういうことだ――
ユディトよ 俺はあなたに
首を差し出し 刀の一刀で
俺は絶命する 俺は恍惚とする
氷河のように沈着だ
俺は氷河をかじりたい
そして血潮滾らせ 永劫を感じたい
俺は悪 俺は善を忘れた
聖者の行進も キリストも
俺は知らない 聖母マリアの慈愛も
俺は救われぬ 俺の心に罪を形成する
氷河の断崖の狭間に俺はいる
そしてじっと死を見つめている
俺は堕落して酒を呑む
恋人よ お前は美しいが娼婦だ
色情に駆られ そして恋人は血を流す
流血こそは己の身を清めるように
俺に十字架が見える 煌々と輝く十字架が
俺は磔にされ
愚民を眺める 激痛に耐えながら
そして唾棄してやる 腐った人間に
俺こそは悪の中の悪 毒のような悪
俺の背後に聖性あれ
恋人よ 貞淑という言葉を知るか?
男はお前に欲情するが
お前はつまるところどうしたいのだ?
恋人よ 花を眺めよ あの神の賜物を
俺は悪を逸するぞ 恋人よ
俺は魔王とともに歩まない 恋人よ
恋人よ 美しいものを忘れた哀れな人よ
お前は美しかった 今では醜女
寄る年には敵わない 殉教の乳房に
俺はキスをする 恋人よ 自殺の人よ
失ってお前は花になった
枯れない花だ ああ背徳が
お前を死に追いやったのか
悪魔よ いるなら出ておいで
ああ俺は恋人をベアトリーチェのように
愛していた! あのベアトリーチェのように
美しい女を! 美とは不思議だ
俺の悪を浄化させてゆく
俺は一切を忘れて 泥道へ戻る
悪よ 何故人間に宿る?
その黒き輝きよ ルシフェルは
愚かな民衆を見て殺してしまう
殺人の季節よ 冬
俺は寒さに震えて
布につつまれ よこたわる
女を見つけては欲情し
ベッドの中でまどろんでゆく
ユディトよ 俺を刺したまえ
その美しき相貌を見せておくれ
あなたにカトレアを差し上げる
俺はあなたを噛み殺したい
醜き俺を人々は忘れる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます