私には好きな人がいます。〜引っ込み思案な女の子のドキドキ告白大作戦

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054922362719

 匂わせ結末で宙ぶらりんの本編の続きを書いて貰いました。



 私には好きな人がいます。

 その人はとても笑顔が素敵な人で、私は彼の笑顔を見ているだけで幸せな気分になれるんです。


 私は彼の事が好きです。でも私は彼の名前も住所も通っている学校名すらも知りません。

 私と彼は通学で使う電車が同じで、私の乗った次の駅で彼が電車に乗って来ます。

 最初はそれだけの関係で、私も全然気にも留めていませんでした。『男の子がいるなぁ』くらいにしか思っていませんでした。


 でもいつの事だったでしょう、いつも彼の乗った二駅後から電車に乗り込んでくる彼の友人が二人いるのですが、彼らと彼との会話の中で、笑い声が聞こえてきました。


 会話の内容までは詳しく聞いていませんでしたが、多分ゲームの話題だったと思います。『男の子は幼稚な話題で盛り上がれて良いなぁ』と思い、ふと顔を上げた時に見えた彼の笑顔にとても惹かれたんです。


『あの笑顔をもっと見ていたい、あの笑顔の近くにいたい』


 こういうのも『一目惚れ』と言うのでしょうか? 今まで何とも思っていなかったはずの彼に対して、自分でもよく分からない熱い気持ちがこみ上げて来たんです。


 その一瞬だけで私は彼を好きになっていました。


 それからの私の視線は事ある毎に彼を追いかける様になりました。

 一度好きになってしまったら、その想いの勢いはもう止まりません。

 彼の笑顔だけでなく、普段の顔、からかわれて怒る顔、試験の結果が芳しくなくて落ち込んだ顔、更には手の動き、足の動きに至るまでが私の心を掴んで離さないのです。


 大好きな彼をずっと見つめていたい。彼の表情の、動きの全てを私に見せて欲しい。


 でも正面から彼の顔を見るなんて事は私には出来ません。恥ずかしすぎて無理です……。

 でも彼を見つめていたい。彼に見つめられたい。彼に「好きです」と言いたい。彼に「好きだよ」と言って欲しい。


 でも彼の正面に立ってしまうと、私が見つめている事が彼に露見してしまいます。だからいつも彼の後ろに立って、窓ガラスに髪型が崩れていないかと確認をする振りをして、ガラスに映った彼の後ろ姿を見ているんです。


 当たり前の事ですが、そうすると彼の顔が見られないんです。それがとても悲しい、バカみたいですね、私。

 同時にそんな自分を情けなく感じるんです。何で悪い事をしている訳でも無いのに私が隠れる様にコソコソしなくてはならないのだろう? と。


『スッパリと彼に告白してしまえば、結果がどうであれ気持ちはスッキリするよ』


 私の中で理性の声が聞こえます。正論です。でもそんなの無理です。話しかけるだけでも滅茶苦茶緊張するのに、告白して、更に振られてしまった、なんて事になったらもう正気でいられる気がしません。


 私の思いを伝えたい。でも面と向かって告白する勇気も無い……。


 だから手紙を書きました。このネット全盛の時代にアナログ感丸出しの手書きのラブレター。


『いきなりお手紙なんか渡してしまってごめんなさい。私は毎日あなたと同じ電車に乗っている者です。いきなりですが、あなたが好きです。あなたのその幸せそうな笑顔が好きです。あなたの笑顔を見ていると、なんだか私まで幸せになって来る気がします。あの、お友達からでいいので、私とお付き合いしていただけませんか? お返事は直接は言いづらいでしょうから、メールとかでも結構です』

 そう書いて、最後に私の名前とメールアドレスを書き添えました。


 手紙を書いていると、彼への思いがどんどん溢れてきて文章が無駄に長くなってしまい、短くまとめるのにとても苦労しました。これでもまだ長いですよね…?

 子供の頃、国語の読書感想文などは文字数を稼ぐ為に苦労していましたが、好きな人への手紙だといくらでも言葉が出てくるんですね。とても不思議な気持ちです。


 手紙なら渡せるかな? 声をかけられるかな? 頭の中で何度も何度もシミュレーションを繰り返し、自然に、気さくに渡せる様に自室の鏡の前で何度も練習しました。


 でも駄目でした… 手紙を書いて自分の気持ちに向き合ったせいなのか、余計に彼を意識してしまって、今度はまともに彼を見る事すら出来なくなってしまいました。


 手紙を渡そうと声をかける。その前の段階から進めないのです。

 ある時は不意にこちらを向いた彼と目が合いそうになって、慌てて目をそらしてしまったり、

 声をかけようとしたタイミングで見知らぬオジサンが私と彼の間に入ってきたり、

 モジモジしすぎて隣の小学生のグループから「あのお姉さん、挙動不審じゃない?」とか言われたりと、なかなか行動に移せません。


 中でも特に多かったのが、私が動く前に彼の友達が電車に乗り込んで来てしまう事でした。

 友達と談笑する彼の笑顔はそれはそれで良いものですが、それを眺めて喜んでいたら、いつまで経っても私の目的は達せられません。


『彼が電車に乗ってから、彼の友達が電車に乗ってくるまでの約五分間』


 これが私に許された行動時間です。限られた時間内に彼に声をかけ、手紙を渡す。文字で表せばこれだけの話です、簡単な事なのです。

 …でも私にはそれが出来ません。勇気が足りません。


 彼は私の事を知りません。知らない子から急に話しかけられて、手紙を貰うなんて少し怖いと思います。変な危ない菌とか付いてるかも知れないし。

 もちろん私の手紙にはそんな変な物は一切付いてません。何ら後ろ暗いこと無く正々堂々と渡せる物です。


 それに… それに私も彼の事を何も知りません。名前や学校名すら、それに既に彼女さんが居るのかどうかも……。


 もし彼に恋人がいたら? ストーカーまがいの変な女だと思われたら? 私が彼の好みのタイプに掠りもしていなかったら…?

 一度ネガティブな考えに囚われると、息が詰まって『手紙を渡す』なんて簡単な事すら出来なくなってしまうのです。


 手紙を書いて渡せぬままニ週間が経ちました。

 手紙はまだカバンのポケットに入ったままです。


 声をかけたい、かけられない。どうすれば良いの? この自問自答を二週間繰りかえしているのです。

 私は駄目な子です。「これを読んで下さい」と手紙を渡す事すら出来ない子なんです。



『神様お願いです。今日こそ、今日こそは彼に話しかける勇気を私に下さい!』

 いつもの電車に乗り、見たことも無い神様に祈ります。


 そして次の駅、いつもの様に彼が電車に乗ってきました。いつもの眠そうな顔、いつもの優しそうな顔です。

 あの顔の隣にずっと居たいと願う事は、罪ですか? 欲張りですか? 私には許されない事なのでしょうか…?


 彼の友達が電車に乗ってくるまであと五分、それまでに彼に私の思いを込めた手紙を渡す。こんな簡単な事が出来ずに、無駄に時間だけが経ってきました。

 私は私自身の性格を知っています。このままではいつまで経っても何も変わりません。ニ週間がニヶ月、ニヶ月がニ年になるだけです。


 勇気を… 誰か私にほんの少しの勇気を下さい……。


 その時です。急な停止信号でも出たのでしょうか、キキーっと大きな音がして電車に急ブレーキが掛かりました。予期せぬ制動に乗客全員がバランスを崩します。

 私などは今まさに、彼に向かって一歩を踏み出そうとした瞬間の出来事です。思い切り前に態勢を崩し… 彼の背中に体当たりしてしまいました。


「ごっ、ごめんなさい」

 慌てて謝ります。始まる前から醜態を晒してしまって、顔が一気に熱くなります。


 でも事故とは言え、彼とここまで接近出来ました。アクシデントに乗じた形でいささか不本意ではありますが、手紙を渡すチャンスは今を置いて他にありません。

「あ、あのっ、これを…」


 手紙を取り出そうともたつく私をよそに、こちらを振り向いた彼は私の顔を見て、そっとはにかんだ様子で

「いや大丈夫… あの… えっと… 君いつも、この電車に乗ってるよね…?」


 そう言って微笑んでくれました……。



 …私には大好きな人がいます。

 その人はとても笑顔が素敵な男の子で、今日初めてその幸せそうな笑顔を私に向けてくれました……。


───────────────────────────


 おわり その日、俺は人生最大の危機を迎えていた。

 俺の名前は田中。ごく普通の男子高校生である。

 成績は中の上、運動神経はまぁまぁ、容姿もそれなりで、特にこれといって目立つところのない、どこにでもいるような男だ。趣味はゲーム。好きなものは美少女。苦手なものは特になし。

 まぁそんなことは今はどうだっていいのだけれど、とにかく今の俺の頭の中にはある一つのことしか存在していない。

 そう…… それは――

 美少女が目の前にいることだ!! 突然だが、ここで自己紹介をさせてくれ。

 名前は田中。性別は男。年齢は15歳。身長は160cmくらい。体重50kgくらい。髪は黒で、目は若干細め。顔立ちもそこそこ整っている方だと思う。

 家族構成は両親と姉が一人。両親は共働きのため、現在一人暮らしをしている。

 


☆ちありや寸評☆

なんか全然関係ない話が始まったぁぁっ!!w

なんなの? 田中がラブレター渡された男の子なのぉっ??!!www

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