こんなふうに働いてきました

Aba・June

第1話 僕にとっての「働く」ということ

 僕にとって働くというのは、ただ単純に生きるためだ。生きるためには働かなきゃいけない。だから働いた。

 困ったことに僕は対人恐怖気味で正直言って他人と接するのは好きではない。時には恐怖すら感じる。

 でも働くとなれば、人間と接しない訳にはいかない。非常につらいが、しかし生きてくためには働くしかない。

 僕は身体が丈夫という訳ではない。スポーツは苦手だ。絵や歌とか芸術的な才能もない。

 ただ、学校の成績は良い方だった。と言って、勉強が好きな訳ではない。しかし、スポーツは駄目、芸術の才能もないとなれば、勉強していい成績を取るしかほかにやれることがない。唯一やれることが勉強だった訳だ。好きじゃないけどある程度成績を取らなければ生きていく方法が無い。だから、恐怖に駆られて勉強していた。

 どういう仕事がしたいとか、そんなものはなかった。目的も糞もない。目的は生きるため。それだけだ。

 何とか大学を卒業して、就職活動をした。

 手当たり次第に応募した。その中で、2つの先から内定が出た。全く違う業種だった。

 どちらにしようか迷ったが、最後に面接を受けたときの社員の印象がちょっとおっとりしているように思えた方に決めた。就職してみたら、おっとりしたところではなかったけど。

 別にどうでもいい。何がしたい訳でもない。給料がもらえればいい。学校の成績がちょっといいだけの人間を雇ってくれるならどこでもいい。

 ここで働けなきゃ生きていけない。転職できるような才能は無い。だから恐怖に駆られて切羽詰まって働いていた。

 僕は出世コースからは脱落していたが、実務的にはある程度認められていて厄介な仕事を押し付けられていた。なんとかこなしてきた。

 ファイトとかそんなものじゃない。恐怖から逃れるために必死だった。失敗したら仕事を失うかもしれない。それだけじゃなく関係者の恨みを買うだろう。対人恐怖気味の人間にとって恨まれるなんて恐怖の極みである。だから本を読んだり話を聞いたりできるだけの情報を集め、どのような方法なら自分でもできるか必死に考えた。夜眠れないことも多かった。横になっていると不安と恐怖が大きくなることを知った。だから悩んでいる時は起き上がって歩き回るか、机に向かっていた方が良い。そんなことも経験から学んだ。学びたくはなかったけど。

 ところが人間って摩訶不思議なもので、僕は上司の言いなりだったかというとそうではなかった。なんかおかしい、これは駄目だと頭に浮かぶと「こりゃ駄目ですよ」とか「こんな変なことしたくないです」なんて言葉を口にしてしまうのだ。当然上司は激怒する。随分いじめられました。

 こんな人間が働いてきたことを書いてみる。

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