88歳になりました!

篠宮玲

88歳

この日は、朝から母がバタバタと家の中を走り回っていた

月菜るなは、母の姿を見ながら朝ごはんを食べていた


「陽菜、早く起きなさい!」

母が妹の陽菜ひなを起こしている声が聞こえた

しばらくして、陽菜が起きてきた


「お姉ちゃん、おはよう」


「おはよう」

と月菜も返すと

「ひいおじいちゃんの家に行くの、お昼頃だよね?

お母さん、なんであんなに忙しくしているの?」

と首をかしげた


「今日はひいおじいちゃんの誕生日のお祝いを持っていくから、色々準備があるんじゃない?」

月菜がそういうと、陽菜もふ~ん。と納得したようだった

月菜と陽菜からみると、曾祖父母で父と母からみると、祖父母にあたる

今日は、曾祖父の88歳になる誕生日だった



「そういえば、お父さんは?」

陽菜は父が一緒に朝食を食べていない事が気になったようだ


「お父さんなら、さっきおじいちゃんに渡す、お酒を買いに行ったよ」

月菜が答えると、そうなんだぁ。と陽菜が言った


そんな話をしていると

「月菜!陽菜!」

と母がリビングに入ってきた

2人が

"ん?"

という顔をしていると

「どっちの服がいいかなぁ?」

母が2着の服を交互に見て聞いた


「「右!」」

と月菜と陽菜が指をさしながら声をそろえて言った


そうこうしていると、

"ガチャ"

ただいまー!と父が帰ってきて、

そろそろ、出掛けるぞ!と言った


「お父さん!ちょっと待って!今、おにぎりを作るから!」

陽菜が叫ぶと

「お昼は途中で食べる予定だよ」

と父が言った

「良いから!良いから!」

陽菜は鼻歌を歌いながらおにぎりを作り始めた


「月菜は用意出来ているのか?」

今度は月菜に問いかけた

「私は大丈夫だよ」

月菜が答える

「先に車に荷物、積むね」

とリビングを出て行った


しばらくして、みんなが車に乗り込むと、曾祖父の家へ向かって車を走らせるのだった


曽祖父の家へ着くと

「景色がキレイだね!」

車から降りて、ん~!と伸びをしながら陽菜が言った


その時、"ガラガラ"

と戸の開く音がして

「みんな良く来たなぁ!」

曾祖母が出てきた


すると

「お祖母様もお元気で…」

と母の話す声が聞こえた


その後、みんなで曾祖父母の家へ上がり、それぞれが曾祖父に誕生日プレゼントを渡すことになった


先に渡したのは陽菜

「おじいちゃん、陽菜ね、おにぎりを握ったの。」

はい、どうぞ!とおにぎりをプレゼントする


「なんで?おにぎりなの?」

と母が問うと

「88歳って、米寿って言うんだよね?だから、米が良いのかな?って思って」

と言った

「たしかに…米寿だけど、それは漢字が…」

と母が言いかけると

「陽菜ちゃん!おじいちゃん、おにぎり大好きなんだ。ありがとう!」

と曾祖父がニコニコしながら言った


次に話したのは月菜で

月菜は、発想が陽菜と被った~とブツブツ言いながら、米の袋を出した

「新米で美味しいって話題の銘柄の米を持ってきたよ!」

おじいちゃん、おばあちゃん、沢山食べてね!

と言った

「おぉ~、月菜ちゃんもありがとう!」

とニコニコしながら受け取り

そして、母と父も2人でお酒を渡し、曾祖母が作った料理を食べ、みんなが帰る時間となった


「泊まっていったら、良いのに…」

曾祖母が言うが

「すみません。明日、仕事がありまして…」

と父が話し


「あら、残念だわ。また、今度、ゆっくりいらっしゃいね」

「また、来なね!」

曾祖父母がお見送りをしてくれた


月菜と陽菜は、窓を開けて手を振り

「「また、来るね~」」

と言ったのだった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

88歳になりました! 篠宮玲 @sora-rei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ