【KAC20225】今何をすべきか 小学生が考える戦争と平和

いとうみこと

敵を見て矢を矧ぐ

 曾祖母に聞いた戦争の話


 六年三組 富田さつき


 身近な歴史について考えてみようという宿題が出たとき、私はすぐに曾祖母に話を聞こうと思いました。曾祖母はとても記憶力が良くて昔のことをよく覚えているからです。


 曾祖母は一九三三年生まれの八十八歳です。黒柳徹子というクイズ番組に出ている芸能人と同じ誕生日だというのが自慢です。あの人みたいに派手なお化粧はしませんが、いつもきれいにしているので偉いなあと思います。あと、平成の天皇だった人と同じ年の生まれだというのも自慢します。


 曾祖母の生まれた年には、ドイツでヒットラーが恐ろしい政治を始めたそうです。罪のないユダヤ人を捕まえては殺してしまうという話を「アンネの日記」という本で読んだことがあります。その頃日本でも中国と戦争をし始めたそうです。日本軍が中国に攻め込んで勝手に国を作って中国人を怒らせたと聞きました。


 曾祖母が小さい頃は、ちょうど世界中で戦争が起こっていたので、今のように豊かな生活はできませんでした。アメリカと戦争が始まると、食べるものも着るものもどんどん粗末になったそうです。十歳の時に疎開といって、小学校のみんなで田舎に引っ越しました。町にいるとアメリカが飛行機から爆弾を落とすので危ないからです。勉強よりも畑を耕したり作業をすることが多かったと言っていました。ご飯はさつまいもや大根ばかりで、肉や魚はもちろん、白いご飯もめったに食べられないし、いつもお腹が空いていたそうです。もちろんおやつなんかなくて、地面に棒きれでおまんじゅうやカステラの絵を描いてお菓子屋さんごっこをして遊んだのが懐かしいけれど切なかったと話してくれました。


 曾祖母には三人のお兄さんがいたそうですが、上のふたりは戦争に行って死んでしまったそうです。長男は南の島で死にました。次男は戦争が終わった時には生きていたのに、シベリアというところに連れて行かれて無理やり働かされたせいで病気になって死んだそうです。二十歳の若さでした。戦争が終わっているのになぜそんなことが起こるのかわたしにはわかりません。曾祖母がその話をしてくれた時は泣いていました。とても優しいお兄さんたちだったからです。戦争に行く時はみんなで万歳をして見送ったけれど、家に帰るとお母さんは隠れて泣いていたそうです。戦争反対とか戦争に行くのは嫌だと言うと警察に捕まって拷問を受けるから、怖くて誰も言えなかったらしいです。どの話もとても信じられませんでしたが、すべて本当のことです。


 今回曾祖母から戦争の話を聞いて、教科書を読んだときにはわからなかった恐ろしさをすごく感じました。「今は平和でいいね」とわたしが言うと曾祖母は言いました。


「日本にいると平和に思えるかもしれないけれど、決してそうではないよ。今でも世界中で内戦や紛争という名前の戦争が起こっているし、それに日本が巻き込まれないとも限らないからね。だから、さつきにはちゃんと考えてほしいの、戦争と平和について、ちゃんとね。だって未来はあなたたちが作っていくんだから」


 わたしはみんなにも考えてもらいたいです。わたしは戦争はいやです。戦争で自分が死ぬのも家族が死ぬのもいやです。きっとみんな同じだと思います。だからちゃんと考えなければいけないなと今回本当に思いました。ひとりひとりが平和についてきちんと考えて行動することが戦争で死なずに済むただひとつの方法だと思うからです。


 これで、わたしの発表を終わります。ありがとうございました。

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