死神の手違いはヒューマンエラーといえるのだろうか?
ViVi
廃止はされていないんですよね
「きょうび
死神は言った。〈なっとるやろがい!〉の精神をもつ、タフな死神だった。
言われたのは、
ヨネは、
“八十八歳”という数字は、いまのところ(つまりヨネが死亡した当時の水準において)、平均寿命とほぼ同じ値である。
だからヨネは、死亡して、この、なんだかよくわからない(けれど
しかし、そこで、死神(を名乗る怪人物――人物?)から語られたのは、その認識をことごとく裏切る情報群だった。曰く、
「ごめんなさい! あなたが死んでしまったのは、手違いなんです。
「たしかにあなたは、人間の基準ではそれなりに高齢でした。
「ちょうど平均寿命くらいだというのも、そのとおりです。
「ですが、それはあくまで平均。
「絶対のタイムリミットなどではありませんし、“平均”である以上は“それよりも上”のケースも、当然、あります。
「ヨネさんは、現在のその年齢の人間の基準でも、かなり健康的なほうでした。
「経済的にも困窮しておらず、日々の生活によく気をつかっていましたね。すごい。
「だから、あのままだと――寿命はコンプラインス的に教えちゃダメなことになってるんですが、もう死んじゃったのでいいでしょう――あと十年ばかり生きるはずだったんです。
「ところが、ここで手違いがありました。
「じつは、古い――いや言い方がよろしくないですね聞かなかったことにしてください――八十年以上も前に誕生した人間となると、現行バージョンとは違うシステムで管理されていたんですよ。(わたしは発生から(人間界単位で)十八年目の死神です。五分の一ほどです)
「なんなら二世代前です。
「それで、その、古いバージョンと新しいバージョンとのあいだで、人間IDが重複するケースがあったみたいで……。
「ほかのひと(こっちはまだ存命なので固有名詞はお伝えできません。あとで帳尻を合わせにいかないとですが)と取り違えて、死亡してしまったんです。
それを聞いたヨネは、「そうはならんやろ」と突っ込んだ。
突っ込まれた死神は、「なっとるやろがい!」の精神を発揮した。
「で、ですね。“手違いによる死亡”には“転生による補填”をすることになっているんですよ」
ヨネは、辞退した。もう充分に生きたし、わざわざ転生したいというほどの未練はなかったからだ。ついでにいうと、こんなインシデントを起こす死神に斡旋される
「いやー。この補填制度って、十五年くらい前に施行されたやつで、しょーじき、時代遅れではあるんですが、けれども廃止はされていないんですよね……」
コンプラインスを遵守する死神が、そう言った。
つまりは制度は(ヨネとちがって)生きていて、ついでに融通はきかない――辞退はできないらしい。(死んだ直後の人間は正常な判断力をうしなっているケースがままあるため、本人の意向は無視されることになっているんです!)
「ですが、まぁ、転生先についてはご安心ください! いいのが揃ってますよ!」
死神は開き直っていた。営業トークというか、古い(ヨネの体感なので、実際かなり古い)アニメに出てくる八百屋か魚屋のようなノリで言い出した。
「プランA。魔王による侵掠が活発で、人界の秩序が乱れており、腕っぷしひとつでどこまでも成り上がれる世界。
「プランB。文明レベルは地球の十世紀くらいで、生活は不自由ですが、転生推進キャンペーンのおかげでチートがついてくる世界。
「プランC。地球よりもはるかに発展した世界。ヒトの大部分は半機械化されています。ご希望なら、生身での転生も可能です。
ヨネは、かなりろくでもないなと思った。いや、まぁ、どこの世界にも相応の困難はあるのだろうし、逆をいえば苦労のない世界などないのだろう。それはわかる。
しかしだからといって、すくなくとも、“いいのが揃って”いるようには見えなかった。八百屋や魚屋だとしても、在庫処分の様相だった。半額シールが貼られている気さえした。
もう面倒になって、「任せるから勝手に決めてくれ」というようなことを言った。すると、
「なるほど、うけたまわりました!」
死神は応じて、
「どこでもかまわない、ということであれば、(わたしたちにとって)イイ感じの場所にアサインさせていただきます!」
カクヨムには、こうしているあいだにも転生シチュエーションが増え続けている。つまりは転生者や、そのリソースとしての魂の需要は尽きることがない。
そして、需要のあるところに人的資源をアサインするのが、死神の仕事なのだ。
死神の手違いはヒューマンエラーといえるのだろうか? ViVi @vivi-shark
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。死神の手違いはヒューマンエラーといえるのだろうか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます