88年生きてきた爺さん

暗黒騎士ハイダークネス

ワシの一日。



 いつも通り、早朝に目が覚める。


 この歳になると、町の爺たちは、朝は早くなるとは言うが、わしにとっては幼少から続けてきたことで何の苦でもない。


 そうして、日課の準備体操をする。


「んん、いい天気じゃわ」


 全身に日差しを浴び、朝の散歩がてら畑の様子を見回りに行く。


 この時期は冬眠から起きた動物たちが、えさを求めて、ここいらの畑を荒らしにくる。


 丹精込めて作った作物を、ぐちゃぐちゃに荒らして、畑にクソして、帰るクソ害獣じゃ。


 都会のもんはかわいそうじゃなんじゃと、わめくが、なぁにがかわいそうじゃ、かわいそうなのは丹精込めて作った作物を食われるわしらじゃ、この村じゃ山にたくさぁん実っとる、秋にしっかりと食いだめておるのが、畑に来る。


 つまり!!わしの作った作物は自然のよりも数倍うまいということじゃな!!


 まぁ、荒らす害獣は駆除じゃがな。


「今日わ、、大丈夫だなぁ~」


 無事な畑を確認し、柵の立て付けなどを見て、散歩に戻る。


「おーう、よっちゃん、今朝も早いなぁ~うちのが漬けた梅があるんじゃ~もってき~もってき~まえの鹿肉のお礼だ~」


「おーう、どうも~田島のじいさん」


「じーさんはやめてくれ~おらはあんたより10も若いだ~」


 ~世間話~


「はっはっは、んじゃな~よっちゃん~」


 時々、自家製の漬物を届けてくれる隣の畑の友人を見送り、さてさてさ~て、何をするか。


 また昼前になったら、畑の様子を見て、新聞を読んで、テレビを流し見し、、、そういえば、そろそろばーさんが好きだった麓の桜が咲くころじゃな。。。


 そんなことを思いながらも、冬明けそうなこの時期は・・・まぁ、やることがない。


 畑のことをもっとやろうと思えば、できるのじゃが、、、


 わしにとって、もうここの畑は趣味じゃからのぉ、、、だからといって、害獣は許さんが。


 夜になったら、息子が週に一度にテレビ電話をしてくる日じゃ、それまではまぁ・・・何かしらをして時間をつぶすか。




 まぁ、、、孫との会話は楽しいわい!!


 孫が楽しそうに今日あったことを話にするだけで、よくわからんこともあるが、つられて笑顔になる。


 じゃが、最近の息子とはちと、、、仲が悪いというわけじゃ~ないが、あーなんとういうかな、、話しにくい。


 こんなことをばーさんに話せてたら、「もっとシャキっとし!」などと活を飛ばしてくるじゃろうが・・・。


 最近正月帰ってくるときや、お盆、時々様子を見に来たり、孫のいないテレビ電話で、、、気持ちはうれしいんじゃが、、

「もう父さんは歳なんだから、ふもとの町で暮らさないか?」。

 と言葉として、はっきりとは言わないが、そう思われているだろうなということは薄々察している。


 その想いにわしは首を横に振った。


 この家には、家族との思い出が。


 この畑はばーさんと一緒に作物を収穫した思い出が。


 この村にはたくさんの思い出が


 詰まっとる。


 それに

何よりも、わしはこの村が好きじゃ。

どんなに田舎と馬鹿にされようが、どんなに生活が不便だと思われようが

 好きなんじゃ


まぁ、息子には恥ずかしくて、いっとらんがな。


そういうところをばーさんにはいつも叱られたんじゃがな。


「また来週は見に行くからな、おやじ」


「おうおう、そんじゃな~」


「おやじ・・・・はぁーうん、また来週」


「孫も用事がなかったら、連れてきてくれ」


「・・・・あぁ」


そんな気持ちを抱えながら、孫の話を聞いた後に、心配する息子との会話を終える。


さて、、、やることもないし、風呂入って寝るか。




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