1月16日 禁酒の日

 はるばる山を越え、谷を越え、時には山賊とも戦いながら体づくりを怠らず、伝説の酔拳の達人と呼ばれる男の住む場所へと向かっていた。噂ではなかなか弟子を取らないと聞く。

 そして、たどり着いた山の上の豪邸。私は急いで門を叩いた。

 出てきたご老人は異様な雰囲気を醸し出していた。

「私に稽古をつけていただきたく参上しました。弟子にしてください」

 男は付き人となにやら小声で話すとこう返した。

「す、すまんが、今は稽古をつけてやれん。き、禁酒中でよ」

 男は酒の瓶が一本もないと続けた。弟子は五十年間一度も取ってないらしい。偶然だろうか。父が断られた時も彼は禁酒していたはずだ。

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