2013年5月3週

「ねえちーちゃん、本貸してー」

「いいよー、テキトーに探して」


そろそろあやちのお帰りの時間かな。

あたしもそろそろお風呂入っちゃおうかなー。

今日は久しぶりに長風呂しようかなー。

映画でも見ようかな?


「防水バッグー防水バッグー」

「ちーちゃんっていつも変な歌うたうよね。」

「あー、無意識だ。わたしの家族みんな歌うからさー。妹なんてお風呂で大熱唱だよ。」

「ちーちゃん、めっちゃ近所迷惑じゃん!」

「わたしはそこまで熱唱はしないよ。鼻歌くらいだよ。」

「いま実際に鼻歌越えてたじゃん。」

「あやちはいちいちうるさいなー。それじゃあいい旦那は見つからないよー。」

「いいもーん、あやちはちーちゃんが結婚してくれるもーん。」

「えー、あやちが嫁はちょっと……。」

「ええええ!!!!あやち初めての失恋。」

「もー、そんなこと言ってないで早く選びなー。」

「選んでますよーだ。ちーちゃんこそいちいちうるさ……。え、ちーちゃんこれ何?」

「え、何?あー、アダルトビデオだね。」

「ちょっと待ってよ、ちーちゃん!なんでこんなの持ってるの!?」

「え、別に普通に見るじゃん。もしかしてあやち、見たことないの?」

「見たことない……けど……。」

「なんだー!見たことないなら言ってくれればよかったのに!見る?」

「え、ちょっと、え、でも、だって、……」

「大丈夫!これ女性用AVだから。」

「女性用なんてあるの?」

「そりゃ女の人もそれなりに見たいでしょ。あ!男性用の方が良かった?」

「いやいやいやいや、女性用で!!!」

「じゃあこっち見よっか。男性用はまた今度ねー。」

「男性用も持ってるんだ…………」


お風呂入るつもり満々だったのにAV鑑賞会になっちゃったなあ。まあいっか。


「そっかー、見たことないのかー。初心だねー、あやちは。」

「うん、見たことないよ…………」

「そんなんでどうやって彼氏とエッチするつもりだったの?」

「それは、彼氏にリードしてもらえば……」

「甘い!あやちは甘いなあ!最近の男は結構マグロだよ!こっちから気持ちよくしてやんないと!」

「マグロ?」

「あー、大丈夫。忘れて。」

「え、なにそれー!」

「いいから!それよりも、そう!こっちから色々してあげないと。エッチできないよ?」

「そんなのでも恥ずかしくない?」

「恥ずかしいなんて言ってたら彼氏なんてできないよ!分かった!むしろ男性用のを見て勉強しよう!」


いやいやするあやちをよそ目にさっきまで準備してた女性用AVをほかって男性用AVを準備するわたし。

なに乗り気になってんだか。

あやちとAVって冷静に考えたら恥ずかしくない?

あーいつものやつだ……。

後悔先に立たずの奴だー。

もう後戻りできんし仕方ない!


「いい!あやちはちーちゃんと違って健全なお付き合いするから、勉強なんて要らないもん!」

「またそんなこと言ってる!大学生が付き合ったら3回目には彼氏の家かホテルでエッチだよ!エッチしたくない男なんていないんだから!あやちは彼氏とラブラブイチャイチャ大学生活送りたくないの?」

「彼氏は欲しいけど…………エッチな彼氏はちょっと…………」

「大丈夫。そういうこと言ってる初心な女子大生子こそエッチにハマるから!あと、男なんてみんなAVでエッチの勉強してるからこれ見とかないといろいろびっくりしちゃうよ。」

「びっくりって何?」

「まあそれは見てみればわかるから。」


ちょいちょいっと最初の方のチャプターは飛ばしちゃって


「じゃあそろそろちゃんと見ようか。まずはここね。男の人のアソコはモザイクかかちゃってるから分かりにくいけど、平均13cmくらいあるらしいよ。あやち手出してみて。」


不安と疑問だらけのあやちの手を勝手にとる。


「ん-、あやちの中指から手首までが14cmくらい。あれが丁度大体それくらいの大きさだね。」

「え、おっきくない?」

「まあ目の前に出されるとちょっと面食らうかもだけどね。」

「え!ちょっと!なんで!口で!」

「これはフェ〇チオだねー。わりとポピュラーらしいから覚悟はしといた方が良いと思うよ。」

「いや、でも、だって、汚いじゃん、やばいじゃん!」

「でもAVでは普通咥えてるから、嫌っていうとちょっと微妙な顔されちゃうかもね。」

「そんな風になるなら彼氏なんていらないかも…………。」


ああ、こうやってまた一人初心な少女が生まれてしまうのね。

AVって、なんて凶悪なのか。

世の中の男子大学生たちよ、申し訳ない。

あやちはもう少し籠の中で丁寧にゆっくり育て上げるよ。


「ねえ、ちーちゃん?」

「ん?どうかした?」

「男子ってこんなに粗っぽいの?」

「え?あー、それねー。うーん。…………残念ながらそうだね。」

「あのさ、あれって、その、……。」

「ん?」

「あれって、あんだけ激しいのって、良いの?」

「『良いの?』って、気持ち良いかどうかってこと?」

「うん…………。」

「えーっと。」


ガシガシあそこを擦ってくるやつねー。

AVの定番だよねー。

えーっと。

いやいやわたしも知らないけどー。

でも、絶対痛いよね。

ネットではあれやる人って嫌われるとか言ってるから、たぶん気持ちよくはないんだろうけど。

ん-。


「ちょっとわたしも分かんないけど、あれやると炎症起きることが多いから、激しいことしてくる人は避けた方が良いかもね。」

「えー、でも見た目じゃそんなことわかんなくない?」

「それはもう経験つんで、判別していくしかないでしょ。あとはこっちが主導権握ってやればさ。」

「えええ!あやちにそんなことできないよー!」

「じゃあ、ジェントルマンな男の人見つけるしかないよね。最初に言った通り、男なんてみんなAVで勉強しちゃってるから、こういうことされることはある程度覚悟しといた方が良いと思うよ。」

「うーん。やっぱり彼氏要らないかもー。」

「そんなこと言わないでさ。頑張ろうよ!」

「やっぱ、あやちにはちーちゃんが居ればいいかも! 」

「そんな冗談言ってないで。ほら、本選ぶんでしょ?わたしもお風呂入りたいしさ。」

「ああ、そうだったー。…………でも今日はなんか気分が乗らないからいいや。また明日ね。」

「あ、そう?気を付けて帰んなね?」


あやち、ちゃんと一人で帰れるかな?

なんかAV見たせいで気持ち落ち込んでたね。

まあ初めて見ちゃったときはわたしも結構衝撃受けた気がするしねー。

そんなもんだよねー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る