九条家の人々と就職と 2
『昨日はありがとうございました。
私たち、いいえ、私は、ぜひ、あなたに来ていただきたいです。あなたのお返事を、できれば2週間以内に、いただけますか? 貴禰』
面接の翌日、受け取った連絡に少し緊張が解れた。どうやら、合格できたらしい。けど、すぐに別の考えが頭を支配した。私は、どう返事しよう、と。
…私は、この先どうしたいのかしら? そんな風に丸々一昼夜考え込んで、返事をすることができなかった。悩みに悩んだ果てに、本当に不意に、顔も知らない“高校の友人”がくれた言葉を思い出した。
『別の灯台の灯が見えるかもしれない―』
漕ぎ出してから決めても、いい。そうだね。
そう思ったとき、何というか、目の前の霧が、ぱあっと晴れた気がしたのよね。
こうして、私はあのお屋敷で、2049年3月からの9年間を、住み込みで働くことになったわけ。
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