突如、大都会の上空に現れた巨大な雪の結晶・ユッキーナ。
ユッキーナは雪を降らせる。
混乱する人々を嘲笑うかのように、或いは何かを警告するように、雪を降らせる以外は特段何もしない……。
この関係性が、とても興味をそそりました。
巨大な結晶が現れ、東京を豪雪へ見舞う災害として認知され、上空の"結晶"に対して、自衛隊による攻撃が執行される。
その傘下で暮らす人々の間で諍いが起こり始めても、結晶は降雪の勢いを止めない。
ビルの三階くらいの高さまで雪が積もる。これは大体、10メートル前後です。都市は壊滅します。
おそらくその時、大都市は真っ白な、一面の白銀の世界に包まれた。
その時、ユッキーナは何の前触れもなく、どこかへ去っていく……。
ここで敢えて、人々の混乱の様子を描いていないのが、僕にとっては戦慄した描写性でした。
人々は死んでしまったのか、諍いを起こす気力も無くなったのか、ユッキーナの動向を伺っているのか、皆で祈っているのか。
そんな沈黙の世界が、この世界の平和として語られ、物語が幕を閉じたのが印象に残りました。
もしかしたら、ユッキーナはそんな沈黙を与えるための福音として、人々の前に現れたのかもしれない。
降雪に対する知識、対抗策の無さ。
それ以上に多くのメッセージを、このユッキーナは残したことでしょう。
誰かにとっての天使で、誰かにとっての悪魔。
これがユッキーナの、怪獣性として描かれていると思います。