逃避行
@HEKISA4
雨音
長くて、冷たい雨だった。
雨粒は細い線みたいになって、たくさん降り注いでた。
1秒が10秒にも思えるほど、
ゆっくり、静かに、時の流れを感じてた。
雨音はどこか遠くの方に聞こえて、
1日中雨の日に、部屋で作業をしている時くらい
どうでもいい生活音になってた。
でも、次の瞬間。
車が雨を潰しながら走り去る
キュルキュルキュルッ…!って音が
大きくはっきりと耳元まで届いた。
音は耳の真横まで迫って、私を現実に引き戻す。
鼓膜の蓋を外したみたいに一気に外の音が耳に流れ込んで
「ヒュー、ヒュー」と自分の荒い呼吸音まで聞こてきた。
きっと運転手はさぞかしびっくりしたでしょうね。
だって、私、こんな土砂降りの中で
路上にへたり込んでいたから。
腕にはまだ温かい肉の塊を抱いてて、
灰色の薄手の部屋着には血が滲んでいた。
逃避行 @HEKISA4
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。逃避行の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます