私がお母さんでいい
ゆる男
第1話世話のやける娘
私が思うこと、それは
いつまでも一緒に居ると思った人が亡くなる
その悲しみを背負いながら毎日生きるのは辛い
それは当たり前だと思うんだけど
私は誰よりも強く生きないといけない
守りたいものがあるから
私は渡瀬沙友理『わたせさゆり』
私は今スーツを着て鏡を見ながら髪を整えている
その間に鏡越しに見える一人の女の子に視線を送る
あいつめ…まだ起きないのか
「ほら、那雪、起きな?今日入学式でしょ?」
私は那雪『なゆ』の体を揺すった
今日で高校生になった那雪だけどいつもと変わらない朝を迎えていた
何やってんだか……ほんと世話のやける娘だなー
私は那雪を"娘"と呼んでいるそれはもちろん
那雪は私をこう呼ぶから
「ん〜〜お母さんお腹空いた〜」
那雪は私をお母さんって呼ぶ
那雪が私をお母さんと呼ぶから私は那雪を娘と呼ぶ
当たり前のことだけどどこか違う
「お腹空いたなら早く起きなさい
お母さんもう準備できてるからね?」
「も〜早いよ〜」
那雪は布団を深く被る
私も堪忍袋の尾が切れた
「いい加減にしろー!早く起きろっての!」
私は那雪が被っていた布団をひっくり返す
「あ〜〜!!寒い!お母さんの鬼ー!」
「早く着替えて!ご飯食べろ!」
こんなことは日常茶飯事である
のろのろと動きながらも
那雪は制服に着替えた
「お母さん見て見てー!」
那雪は私に制服姿を見せてきた
「……」
「制服かわいくない!?」
「……うん、かわいいね」
那雪が高校生か……
段々と大人になる"娘"の成長を見ると
なんだか感慨深いなー
まだまだ中身は子供だけどね
そんな私は那雪の姿と、10年前に亡くなったあいつの姿を重ねていた
こんなにも成長した那雪の姿をあいつにも見てほしかった
パシャっと那雪の制服姿をスマホの写真に収める
那雪の支度も終わり
電車で10分ほど
駅からは5分で着く高校には大きな看板で
【ご入学おめでとうございます!】の文字がある
「お母さん!一緒に写真撮ろ!」
那雪にそう言われてスマホの画面の中に入る
那雪は満足そうにしている様子だった
「これから楽しみだね」
私が那雪に言うと
「うん!この写真もママに見せたい写真のフォルダに入れるんだ!」
那雪はあいつをママと呼んだ
私はお母さんであいつはママだった
「お母さん!こっちにクラス表書いてあるよ!」
那雪に引っ張られて行った先に掲示板がある
そこの1組に書かれていた名前を私は見つけた
「那雪、あったよ」
私は"安達那雪"の名前を見つけた
安達とは私の妹の苗字だ
安達雪菜『あだちゆきな』は4歳下の私の妹だった
旧姓は渡瀬雪菜
あいつが17歳で私が21歳の時の話だった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます