42. 困った時は。

「おはようございます…」

「おはようございま、……待ってましたっ!!」

 所長、それは芝居を観に行った時に言いましょう…。

佐久さくさんが来てて…」

 モジモジしながら助けを求める所長は、どうも佐久さんが苦手のよう…。

「また、ですか…?」

 ヒソヒソと話していたら、

「何、話してるの…?」

 佐久さんの声が背後から降って来て、驚きが隠せず。

「い、いえ…」

 何と言おうか考えている間に、

「佐久さんって、出入り禁止になってるのに何でいるんだろうねって言ってました」

 はっきり言う名波ななみに、

「うん。そうだね…」

 照れながら言う佐久さんが、

「でも、もう独り身だから関係ないでしょ…?」

 いや。

 いや。いや。

 名波と考えていることは同じだ。

「佐久所長、立場わかって言ってますか…?」

「元妻と職場は関係あるでしょ…」

 佐久さんは笑い飛ばして、

「確かに彼女は会社ココの役員だけど、会社の利益がよろしければ問題ないよ」

 ねっ。って私に言われましても…。

「そんなもの、なの…」

 俺達の関係って…。って、何かドズ黒い何かが…。

「佐久所長、自分でまいた何とかって言いますから…」

 名波は掃除の続きを始める。

「名波さん、相変わらず手厳しいよねぇ」

 笑顔で名波の毒舌をかわす佐久さん。

「佐久所長にはそんなに厳しく言った覚えがありませんが…?」

 目も合わさず、黙々とテーブルを拭きながら、

「ご自身の出入り禁止解除をしてから来てください。従業員が混乱を招きます」

 正論を言い放った。

 さすが、名波…。

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