BUG RESTORE

PROLOGUE. 居酒屋「いちみ」

「いらっしゃいませ」

 聞いて欲しい。このドズ黒い思いをっ!!

「あ…」

 偶然なのか、その…見覚えのあるヒトがカウンターに。

「どうも…」

 ニコッと笑う姿は、更に見覚えがあった…。

 どうしよう…。

 ココロに悪いが、おなかが減っているので席についた。

「おひとりですか…?」

「はい…」

 手招きしている…。

「俺もヒトリですから、一緒にどうですか…?」

 うーん…。

 そう言われても、今日は愚痴を言おうと思って来たワケで…。

「二人とも、知り合いなの…?」

 店長がニヤニヤしながら、

塩田えんだ、今日は愚痴りに来たんだろう…?」

 うわっ…。

 店長とは、幼い頃からの腐れ縁というか…、とにかく離れても何かしらどこかで出会ってしまう。

 このお店を知ったのは、偶然。

 同居人と上手くいかなくなってどうしようもなくて、ふらっと立ち寄った居酒屋だった…。

「俺が聞きますから大丈夫ですよ」

「いや、塩田に言いたいことがあるからいいよ」

 言いたいことって…。

「ハッキリ言うぞ」

 まさか、出禁…?!

「お前、別れたらいいんじゃないか…?」

 は、い…?

「いるじゃん」

 と、青年を指差す。

「あかんやろ…」

 思わず、方言も出てしまう。

「ハタチは超えてる…、あかんことないと思うけど…?」

 店長の基準は、ちょっとずれてる…。

「それにちょうど今、」

「店長っ!!」

 言葉を遮ったのは、青年だった。

「自分で言います…」

「おぅ…」

 そして、店長が席を外した。

「塩田さん…」

 何だろう。コレ。

「好きです…」

 いや、あの…。

「だいぶ、呑んでるのかな…?」

「お酒の勢いじゃありません…」

 俯いて、

「俺、呑めませんから…」

 そっと私の手を握り…。

「駄目、ですか…?」

 頷く。

「だって、あなたと私は…」

 20近く離れてて、将来ある若者を独り占めするのは…ない。

 私の中では、有り得ない…。

 見た目も、中身も…、いいから、きっとすぐいいヒト見つかるよ…。

「じゃあ、長く付き合えるかどうかで考えたら…?」

 そう言って、店長はビールと枝豆を私の前に置く。

「塩田、コレは奢る」

 珍しく店長がオトコマエな事を…。

「長く一緒にいたって心が通じない相手と一緒にいて、楽しいか…?」

 楽しくない…。

 だから、こうやってココに来ては愚痴って帰るんだから…。

「俺となら長く付き合えそうじゃないですか…?」

「付き合いません…」

 言葉と態度は、違うけど…。

「塩田さん…?」

 多分、手離したくないんだと…、思う…。

 今、この手を離せば、もう一緒にいられないんだって…。

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