第4話 告白
「ワンランク下げろ。その方が無難だ。」
担任からの一言は、ショックだった。
公立高とはいえ合格の事をを考えるとボクの成績ではギリギリだ、という事だ。
ギリギリなら、がんばればいい。そう食い下がったが、ダメの一点張り。
仕方なく言う通りにしたものの、心のモヤモヤは晴れなかった。
図書室の一件から程なくして、僕らの共通点だったあの人気アニメは、最終回を迎えた。
結果、青山さんとの会話は減ってしまった。
と言っても、やはり会話が減るのはさみしい。
しかし、ボクらは受験生でもある。勉強もしなくてはならない。必然的に勉強の会話の方が増えていった。
さらにボクには「困った事」が起きていた。
江南さん、である。
勘違いとはいえ「あんな事」があったので、ボクは、彼女の事を少しだけ意識していた。
江南さんも、愛嬌のある笑顔とキリッとした雰囲気が魅力的だ。魚が苦手なところも面白い。
だから、もし青山さんの事がなかったら、好きになっていてもおかしくなかっただろう。
浮気っぽいと思われるだろうか?
だけど、意識せずにはおけなかった。
そして体育祭も終わり、学校行事では最後のお楽しみ、文化祭が近づいてきた。
ウチのクラスは。「学園ドラマ劇」をやろうという事になった。
が、ボクはこの「学園ドラマ」が嫌いだった。そこに出てくる教師がウソくさいし、現実の教師の中にはドラマ好きで教師になった、と公言している「エセ教師」もいる(担任も、だ)。そういう「連中」とボクは相性が最悪だった。
そして、文化祭当日。
…全然、お客さんが来ない。
当番だったボクと数人のクラスメイト以外、誰もいなくなっていた。
開店休業となったので、ボク達は教室を閉め、他のクラスの出し物を観に出かけてそのまま解散、という事にした。
…やがて、廊下の窓から夕焼けが見えはじめ、そろそろ帰ろうかと考えていたその時、
「あ、矢尾くーん。やっほー!」
青山さんが現れた。
鼓動が早くなる。嬉しくて仕方ない!
周りには誰もいない。二人だけ。
この時どんな会話をしたのかまったく覚えていない。ただ彼女の笑顔が目の前にあって幸せだった。
真剣に恋をしていた。
空が夕闇に変わる頃、ボクは勇気を出して、告白した。
「青山さん、オレ、君のことが好きだ!」
「あ…、えと……ごめんなさい。」
「え。」 戸惑いを隠せなかった。
「私、カレシいるの。夏休みに告白されたんだ…。」
何とかボクは言葉をふりしぼった。
「…あぁ、そうなんだ…。」
…「あの日」熱を出さなかったら?
無意味な問いかけが心の中を駆け巡る。
後に、同窓会が行なわれた時。夏休み明けに、空気が重く感じた理由がコレだった。
みんなが言うには、ボクが青山さんを好きなのが態度に出ていてバレバレだった(当然、青山さんにも)そうだ。
だから、青山さんに彼氏ができた事をボクに言えなくて、気遣ってくれた為だった。
「だから……じゃあ。」
彼女はボクの横を足早に通り過ぎて行った。
ボクは振り返らなかった。
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