第5話

[屋上へのドアはここか。こうなるまでは、ドアを施錠していなかったらしい。夜の間も、だとか。あ、ここに足跡がある。こっちへ行ったのか。ずっと屋上にいたのか。よく気づかれなかったものだ。……居た。意外に早く見つかった。運が良かったな。探そうと思えば見つかるものか。]


 開いている窓のそばで、外を眺めていた。風で頭が冷やされる。意外と、校舎のそばまで枝が伸びている。あの木なんか、触れているようだ。少し冷静になったみたいで、考えを巡らせる余裕ができた。

 そういえば、昨日は雨だった。寒かっただろうな…。あ、そろそろ授業が始まる。教室に戻らないと。

 教室はまだ、全体的に騒がしい。授業にも身が入らない様子だった。そのまま、いつの間にか一日が終わり、部活のはずだったけれど今日は無しになり、下校だ。

「静永」と思原。

「何?」今度は、何の用だろう。

「今日、一緒に帰ってもいいか。また聞きたいことがある」

 僕も、時間が経って反省していたため、「いいよ」と返事をした。

「お前の家、どっちだ?」

「あっち」言いながら指を差す。

「俺と同じ方向か。ならいい。帰ろうか」

 思原は、先に立って歩き始める。思原も、徒歩通なんだな。

「ねえ」僕は聞いた。

「なんで一緒に帰ろうとしたの」

「言っただろう。聞きたいことがあると。お前こそ、なんで一緒に帰っていいと言ったんだ。あんなことになったのに。それに、友達とかは」

「穩陽は、バスなんだ。いつもは、光と帰ってるけど…」

「不躾なことを聞いてすまなかった」

「いや、僕も謝ろうと思ったんだ。ごめん。あんな風に怒ってしまって」

 思原は「いや」と言い、

「こちらこそすまなかった。無神経なことを言った。あんな時に、言うべきではなかった」と続けた。

「うん。じゃあ、調べるのをやめる?」

「すまない。それはできない。あいつ…猫間光とやらのためにも、やめるわけには、行かない」光の為、か…。

「いじめについて、教えてくれないか」

「無神経さを謝ったわりに、またそんなことを言うんだ」

「すまない。でも、教えてくれ」そう言った思原は必死そうな顔をしていた。

「いいよ。教えてあげる」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る