天使が導かせていただきます!

銀じゃけ

第1話




「私はあなたの49日間を導くために来た天使です。」






そう、私たち天使は亡くなった人を49日の間、この世で迷わないように導く役目。

私たち天使は漫画やアニメに出てくるような頭に生えた輪はなく、人間とさほど変わりのない姿。



違うところといえば、天使の羽と脱ぐことのできない白いワンピースぐらい。

天使の役目としては、ただこの世で迷わないように49日ついているだけじゃなく、天使が現れた時点で契約が完了している。



もちろん天使と魂との間に結ぶ掟が何個かある




1、天使と魂は恋に落ちてはいけない

2、天使と魂は体の関係を持ってはいけない

3、お互いを知りすぎてはいけない




以上の3点は絶対に守らないといけない。

破った場合は天使は堕天し、魂は地下という場所に連れていかれてしまう。

私はまだ天使を長くやっていないけど、何人か連れていかれたのを見たことがある。

説明はいらないかもしれないけど、”魂”とは亡くなった人のことだからね。念のため伝えておくわ。




プラスで魂側は49日間でやらなきゃいけない掟がある



①転生の神へ挨拶する事

②天空への道を覚える事

③彼岸時の現世への降り方を覚える事

④生前にお世話になった所へ挨拶に行くこと



以上が魂だけに与えられる掟

これを49日でやるのだからなかなか大変な作業だし、終わらないとそれも地下に強制的に連れていかれるから覚悟してね。

連れていかれた人は未練が残る人も多くて、その人たちが呪縛霊になっているとかなんとか?

なんて悲しい結末…


詳しくは知らないけど。


え?大変そうに聞こえない?

①はともかく、②③④はかなり労力が必要なんだからね!!

やってみればわかるわ。



「と、いうことで以上が説明になりますが質問等ありますか?」

「ない。この紙ぺらだけで説明されてもって感じだし。あと、生前に世話になったところなんてないんでそこの項目だけはクリアでいいよな。」



そう言うのは今回担当になった魂。

ダボっとしたパーカーに濃いめのデニム、マッシュヘアというまぁ、普通で今はやりの男の人って感じ。

私より少し年上に見えるけど、話し方からして高校生ぐらいかな?

こういう時、前情報とかもらえる制度があればいいのにな。



確かにこの魂の言う通り、紙一枚にやることを書いてあるだけで詳しい説明とかは書いていない。

詳しい説明は天使側がやるからいいでしょ!っていう神側の考えが丸見え…



もう少し天使に優しくしてくれてもいいんじゃない?


ちなみにこの紙はクリアになっている項目にはチェックがつくような仕様になってる。

でも彼の持っているリストにはチェックがついていないんだよね。

どこかしらにお世話になりましたってあいさつに行かないとだめってことね。

今回はちょっと苦戦しそう。



「とりあえず、まずは①の神への挨拶に行きましょう。」

「あぁ。」

「そういえばまだ自己紹介していなかったですね。私の名前は―」

「いや、名前とかどうでもいい。天使さんとか呼べばいいか?俺のことは好きに呼んでくれ。」



なに、そのめんどくさいって顔…

自己紹介ぐらいしたっていいじゃない、減るわけでもないし。

まぁ、名前は呼ばなくてもなんとかなるけど、なんか寂しいじゃん!



「つれないですね。まぁ、それでいいですよ。」



そんなこんなで、つれない魂君と一緒に神に挨拶に行って、神道から現世への案内をした。

ちなみにこの道は②の項目なんだけど、覚えるまでクリアにならないの…。

独り立ちしたとき迷ったら大変だしね。



そもそもなんで②と③で別れているかというと、現世に降りるときと昇るときは違う道じゃないといけないって掟があるみたい。

なんか衝突を防ぐためとか言ってた気がする。

まぁ、そこは重要じゃないでしょう!



この道覚えるのに普通なら2週間とかかかるのに、この魂君は1週間で終わってしまった。

ちなみにミニ情報だけど、魂たちは少し浮遊できるようになる。

浮遊って言っても少しジャンプ力が高くなるって感じかな。ぴょんじゃなくて、ふわ~って感じ!

49日が終われば飛べるようになるの。

だから、今が人間っぽくいられる最後の期間みたいな?

何でって?理屈は私にもわかりません!神のみぞ知るってね!!



「道も覚えたし、これで俺は自由になるのか?」

「本当に全部クリアしているなら自由なんだけど、私が解放されないしリストにチェックついてないからダメです。」

「どういうことだ?全部クリアしたじゃねぇか。意味わかんねぇ。」

「いや、あなた”お世話になったところに挨拶に行く”って項目クリアしてないじゃない。」

「最初にも言ったと思うが、俺は世話になった人なんていないから!」



そう言うと魂君はどこかに走って行ってしまった。



「もう…逃げても何も解決しないしクリアしないと自由にもなれないんだって。このままじゃ――!」



さっきも言ったけど、人間っぽくいられる最後の期間だから、もちろんお腹空くしのども乾く。

眠くもなるし、疲れもする。

でもお店に行っても生きている人には見えないから買えない。

だから天使から全て支給してもらわないといけないんだけど…。


最悪の場合、魂の状態で屍のようになってしまう可能性もある…それだけは私が担当の魂だけは避けたい!!




魂でも行ける範囲で私のわかる場所を手あたり次第探したけどなかなか見つからない。

本当にどこに行ったのさ!







んー、一つだけ思い当たるところがあるけど、どうだろう。





-つづく-








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