名前


「…あれ?」



目が覚めると、視界が真っ白で、何も見えない。



––え、何。私死んだの?



すると、視界がモゾモゾと揺れる。



「ぅわっ!」



私は、ガバッと起き上がる。



白いふわふわが寝ている。



「…んきゅゎ…」



「…出ていかなかったの?」



「…んきゅう?」



起きた。



すると、ふわっふわっと飛んだ。



「飛べんの!?」



「んきゅ。」



こちらへ寄ってくる。



手を広げると、手のひらに乗った。



「…ここにいたいの?」



「んっきゅ!」



「…ちょっと愛着湧いちゃった。ここにいたいなら、いてもいいよ。特にお世話しないけど。」



「ん。」



窓を閉め、ボサボサの髪のままリビングの座椅子に座る。



そして、スマホでケサランパサランの生態を調べ始めた。



「…君、これ?」



白いふわふわに画面を見せる。



「…んん?」



「違うの?」



「んん〜。」



…わからん。



そのまま画面をスクロールする。



「白粉を食べるの…?」



とりあえず、粉のファンデーションと小麦粉と片栗粉をそれぞれ皿に出してみた。



「…わぷっ!ちょっ!待って!」



白いふわふわは粉の上でぴょんぴょんと遊び始めた。



粉が舞う。



「やばいやばい!」



皿を没収し、タッパーにぬるま湯を用意した。



白いふわふわはタッパーの中に入り、気持ち良さそうにしている。



その間に、舞った粉を掃除する。



「…君は粉食べないんだ。」



タッパーから上がったふわふわをハンドタオルで拭きながら、話しかけた。



「んきゅ?」



ふわふわは、昨日出しっぱなしにしたイカソーメンを興味津々で見ている。



そして、どこから現れたのかわからない丸っこい前足を出して、イカソーメンを持ち上げ、ひとかじり。




「…きゅわわぁあ!」



ぱぁっと笑顔になり、高級なステーキを食べた時のような反応をしている。



「え゛、イカソーメン食べんの…」



ガジガジと食べ進め、あっという間に一本食べ切った。



「…けぷっ。」



一本でお腹いっぱいのようだ。



「なんと安上がりな…。」



私はフッと笑った。



「ねぇ、君、名前は?」



「んきゅ?」



「私はヒイラギ 真実マナミ。よく、マナって言われてる。」



「ん?」



「マナ。マーナ。」



「…どっぼ。」



「は?マ、ナ!」



「どっぼ!」



「なんだそれ!」



私は大笑いする。



「ねぇ、君に名前あるの?」



「んきゅう。」



「ないの?じゃあ、私がつけるよ!んとねぇ…」



ふわふわをよく見る。



––この子、耳かきの梵天ボンテンに似てるな。



「決めた。君の名前は、ぼん。ぼんね。」



「…ぼん?」



「そう!ぼん!」



「ぼん!」



ぼんはぴょんぴょんと飛び跳ねた。



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