【KAC20225】米寿の喜子おばあちゃんが、乙女ゲームの世界に転生したら

帝国城摂政

第1話

 ----米山喜子よねやまよしこ、御年88歳。

 子供4人に孫9人、実に愉快な最期を病室にて迎えた彼女の魂は、神によって丁重に葬られた。


 神は彼女の魂をしっかり純白の状態へと漂白し戻したのを確認した後、とある世界へと転生させた。

 そこは剣と魔法、そして王族と貴族社会が色濃い、地球の世界の知識に合わせるとするならば、乙女ゲーム世界と表現される世界であった。


 1つ誤算があったとすれば、喜子の性格が魂にしっかりこびりつきすぎてしまい。

 転生した女の子の魂に、喜子の性格が色濃く出過ぎたということだろうか。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「ライス・マウンライス!! お主が、ミュリスに虐めているという証拠はあがっている!! いますぐミュリスに謝罪せよ!!」


 この国の第二王子、シュルメール・アルベルト・アインシュタインは、ビシッと、指を彼女に突き付けていた。

 それを受けてライス・マウンライス----転生前は米山喜子と呼ばれていた彼女は、むむっと、眉間にしわを寄せる。


「----これっ!! 人様に指を突き付けるなぞ、そのような事は止めるのじゃ!!」


 ビシッと、ライスは叱りつける。

 その妙な威厳を持った迫力、別名、88歳を向こうの世界で過ごした経験によるお叱りが、シュルメールに重く圧し掛かる。

 具体的には、おばあちゃんの本気の怒り、ってやつだ。


「うぐっ……!!」


 シュルメール第二王子は途端に胸を押さえて、深呼吸をする。

 そして、罪状を読み上げようとすると----


「だいたい、何故、親様から貰った大事な髪を金色なぞにしとるんじゃ」


 と、今度はシュルメール第二王子の鮮やかな金色の髪について言及し始めた。

 

「いや、これは……地毛で……」

「そんな明るすぎる地毛があるまいな! 不良じゃ、人様に恥ずかしいと思わんのか、お主!」


 そもそもライス----つまりは米山喜子の頭の中では【金髪=不良の髪】ということになっているため、そのまま延々とお説教を始める。


「だいたい、お主の名……えっと、"するーめーる"じゃったか」

「……シュルメールです」

「横文字ばかりで覚えにくかろう! "たろう"とか、"たける"だとか、そのように覚えやすい名前はどうしたのじゃ! 親様から貰った名を捨てたんじゃあるまいな?」

「えっと、その……」


 シュルメール第二王子は困った。

 まさか、ここまで扱いづらいだなんて……!!


「(も、もっと、ちゃんと調べてから、呼びつけるべきだった……!!)」

「これっ! 話はまだ終わっておらぬぞ! そもそもじゃな----」






 ちなみに、虐められたと訴えでた当人であるミュリスによると、


「いきなりスカートを引っ張られたんです! もう、短いからもう少し長くせよ、だなんて! 信じられますか、これって!」


 との事だったらしい。

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【KAC20225】米寿の喜子おばあちゃんが、乙女ゲームの世界に転生したら 帝国城摂政 @Teikoku_Jou

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