第7話 バイト探し
「……であるからして、次の章ではエミエミールの大切な昆虫標本をぶっ壊した憐れな少年が謝罪しに……」
(ぐぅ……どれに応募しましょう)
五時間目の現代文の授業。あたしは教科書を机に立てて授業受けてる風を装いつつスマホのバイトアプリで良さげなバイトを探しています。
[貴様……]
天井分まで稼ぐとしてだいたい九万円は必要……イベント初日には到底間に合いませんね。
東京ですから最低賃金は高いとして、なるべく短期間でがっぽり稼げるバイトが良いのですが。
イベント期間は約二週間きり、これを逃すと次はいつ入手できるか分からないですからね。
うーん。とはいえガチャ代を稼ぐだけなんで、めぼしいものは短期の派遣バイトくらいですね。ですがこれからのことを考えて長期も視野に入れるべきか。
「南條」
イベント?というとドームとかでの観客の誘導ですか。これで時給結構高い。ですがちょっと遠いし、交通費は自腹。ケチですねこの派遣会社。近距離だと、倉庫での仕分けや梱包?よく分からんですが力仕事はNGです。
ん?これって駅前のケーキ屋じゃないですか!求人募集してたんですね!あそこは美味しいのでもしバイトすれば賄いとかくれますかね。ちょっとありです。時給は東京都最低賃金ですが。
「南條!!!」
な、なんですか!?耳元で怒鳴られたので耳がキーンとします!
「はひ!?」
「教科書183ページ。謝罪しに行った少年の気持ち、答えられるな?」
しょ、少年?あぁ、今授業でやってる小説のことですね。全く聞いてませんでした。ですがこの物語はネット界隈でもさぞ有名。一先ずこれを言っとけば!!!
「そうかそうか、君はそう言うヤツなんだな」( -`ω-)✧ドヤッ
「ほぉ、先生の気持ちをよく読み取れたじゃないか。では先生の次の行動ももちろん読めるよな?」
「そうかそうか、君はそう言うヤツなんd……」
[やかましいわ]
先生はあたしの手からスッとスマホを抜き取りました。ぐぅぅ!これは現代文の教科書が異常にちっちゃすぎるせいだぁ!!!
*
授業中にバイト探ししてたことがばれ、敢え無く反省文を書くことになりました。おまけに今回は生徒指導室ではなく、職員室前の廊下に設置されてる対面机で書かされたので、通行人の声が騒がしいったらありゃしない!
「午後にまで反省文で時間を潰すとは……」
[貴様は今日一日中反省文しか書いておらんかったな]
ですが反省分書いてる間にバ先は決まりました!あたしの脳内はマルチタスクですので。
「とりあえず目先のお金を手に入れるために短期のシール貼りを、そして将来を見据えてケーキ屋のバイトも応募しました!シール貼りの方は来週説明会?があるみたいで、バイトはその後になるらしいんですが、これでは到底ガチャまで間に合いませんね。問題は明日のケーキ屋の面接ですが……リクルートスーツとかいるんですか?」
[遅刻して蹴落とされる未来しか見えんな]
「そんな学校じゃないんですから」
悪魔が変な目であたしを見てきますが無視するとしましょう。今日は反省文書きまくって疲れましたね。部活がありますが今日はもう疲労困憊です。参加すれば倒れそうなのでサボりますか。
「宍倉くん、南條くんを見なかったか?」
「委員長!南條ってあの?」
「あぁそうだ。奴め、今日は何故だか部活をサボると俺の勘が言っている。これは正門突破される前に捕まえなければ、むむっ、いたぞ!ではさらば!」
「あっ、はい。あれが、南條黒子か……」
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