第6話 名案
「うぬぬぬぬ……」
次の日の昼休み。あたしはいつもの屋上で真剣に、それはもう真剣に考え事していました。
[どうした、何時になくそのアホ面を顰めおって]
「どうしたら反省文で昼休み潰れないかなって」
[素直に定時に登校しろボケ]
ゴリマッチョ先生は非常に厄介で、あたしが登校すると毎回門の前に仁王立ちで待ち構えていて、あたしを連れて行くのです。にしても暇なんですかねあの先生。あたしを連行する際の鬼のような形相は通行人にもさぞ恐れられていることでしょう。
今日も生徒指導室に連行されては反省文五十枚書かされ、貴重な昼休みを潰されました。おかげで昼休みは残り五分しかありません。対策を立てようにも日に日に反省文の量が増えていくのも厄介な点ですね。
「どうしたらゴリマッチョ先生の目を盗んで登校できるんでしょう」
あたしは熟考しながらカロリーバーを頬張ります。最近は反省文の量が増えたせいで昼休みの時間も削られるため、まともに弁当も買えません。
「ねぇ、クソあく……ミミック」
[なんだクソ遅刻魔]
「悪魔の力であたしの分身とか作れませんか?もしくはゴリマッチョ先生を洗脳して先生から遅刻という概念を消失させるとか」
[我が力で貴様の鶏脳をちょいと回転させてやろう。必ず合理的手段を閃くはずであるぞ?定時登校というのだが]
「ミミックはアスタロト様の忠実なる配下だったんですよね?であれば、生まれ変わりであるあたしの命も忠実に……」
[するかボケ。我はアスタロト様の忠実なる臣下であって貴様の配下ではない]
「あーどーっしよっかなー。ミミックが能力使ってくれたら試練にやる気出るのになー。やめちゃおっかなー」
[どぉれアスタロト様の記憶を取り戻すまで身も心も鶏にしてやろうか。なぁに心配は要らん。獣の餌食となった場合は我が守護してやるぞ?大事な生まれ変わりだからなガッハッハ!!]
「クソが」
この悪魔。あたしを大事なとか言いながら息をするように鶏肉化させてきますから油断なりません。
「むっ、むむむむむ?」
[なんだ?その鶏肉脳で筋肉教師を傀儡とさせる方法でも編み出したか?]
「クソが」
とまあ、ミミックに力を借りるつもりは毛頭ありませんけどね。そうです、何を隠そう、あたしはアスタロト様の生まれ変わり。ならこのクソ悪魔に頼らざるとも悪魔の力を使えばよいのでは?
「そうです、そうしましょう!明日ゴリマッチョ先生に試してみましょう!あの口うるさい筋肉だるまをコケーとしか言えない哀れな毛玉にしてやりましょう!明日が楽しみですね!」
[……]
と、そんなこと考えてる間にチャイムが鳴ってしまいました。あたしは残りのカロリーバー半分を食べきります。ついでにチュイッターを開いてタイムラインを更新、っと♪
「な、なん……だと……」
[今度はどうした。そんな干乾びた顔して]
反省文と考え事してたせいで全くちゅいったーを見ていなかったことが災いしました。
「つ、つつつつつ次のいいいいいいイベ!?!?!?!?きゅらたんですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅはわぁぁぁぁぁぁきゃわきゃわきゃわとととととと尊み爆発ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」
[ついに全ネジが外れたか]
あたしが現在進行形でハマりまくっているリズムゲーム「キュアキュア・バンド・ドリーム(略:キュアドリ)」という端的に、とにかく端的に説明するとイケメンたちがバンドを組んで成功していこうぜーって趣旨のリズムゲームがあるのですが、たった三十分前に公式アカに新イベの告知が来たみたいで……
「げ、げげげげ限定ガチャにきゅらたんが!?!?!?こここれは引かねば!?これは引かねば!?い、石、石、石は……」
一か月に一回行われる最高レアが二倍という超お得ガチャ「キュアフェス」に限定キャラとしてあたしの最推し「キュラトン・アスタルティーナ(略:きゅらたん)」というイギリス人のゆるふわ系英国紳士(キャラ)が登場するみたいなんです。あたしは二年前にサービス開始されて以来、恒常、限定含めすべてのガチャから排出されるきゅらたんをコンプしてきました。その為の情報収集、そして資金集め(親への土下座)も欠かさなかったのですが……今回はこのクソ悪魔の騒動ですべての思考を奪われていたため、できませんでした。
「たった今届いた詫び石換算しても十連すらできん」
[さっきから何荒ぶっておるのだ貴様は]
キュアドリは十連ガチャを引くのに必要なキュアスター(キュアドリにおいてガチャを引くために必要なアイテム)は2500個。大してあたしの所持するキュアスターは20個。これでは到底天井(キュアドリにおいて一定回数ガチャを引くとそのガチャで登場するキャラクターを一体交換できる機能。大体300連)は絶望的。
「ガチャは明日から、今から確保できる分でも十連引けるかどうか……こ、これはこれは、課金しかねぇ!」
[よく分からん禁忌に触れようとしてるのだけは我が悪魔の勘で分かるな]
さ、財布を、財布を確認!?あたしは大急ぎでバックからニュウドウカジカちゃん財布を取り出し、中を覗き見……
「す、すっからかん……弁当分の英世一枚しか……」
[貴様が昨日ゲームセンターで浪費しまくっていたな]
「ぐぅぅあの時クマッピィにムキにならなければ……!!」
こ、これは、これは、禁忌を犯すしかないようです。
「バイトするかぁ……」
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