第4話 食パンの袋を留めるアレ
「やっとみつけたぁ~黒子ちゃん屋上にいたんだねぇ。オカ研の部室も鍵閉まってたから心配したよぉ~」
このいかにもふわふわとした少女は、
黒髪ロングの美人さんで、クラスでは割と人気あります。今日はその髪を一つに束ねてますね。
「次の時間体育だって~。急がないと遅刻しちゃうよぅ~」
「マジすか」
緊急事態発生です!体育だと授業中に遅弁できないじゃないですか!
[よかったな。御理瓦に指導されずに済むぞ]
「仕方ありません!お腹空いたら運動なんてできませんからね!仮病使って保健室で食べましょう!」
[そうだろうと思ったわ]
「というわけで倉持さん!今日は体調が悪いので休むと体育の先生に伝えておいてください!」
「りょーかーい」
[貴様も何故考えなしに了承する]
何とか昼食の時間を確保できましたね。本音を言うと私は体力がないので体育にはあんまり参加したくないのです。私の頼みを聞いてくれた倉持さんは踵を返し戻っていきます。では私も保健室に……
「くくく倉持さん!!!」
「ん~?どうしたの~?」
私は、思わず倉持さんを引き留めてしまいました。気になってしまったのです。倉持さんの黒髪を結いでいる髪留めが……
「そ、その髪留め……」
「あっ、これ?私が趣味で集めてるバッグ・クロージャーなんだけどね!せっかくだから髪留めにしたんだ~。可愛いでしょ~どう、似合う?」
「バッグ・クロージャーって確か食パンの袋留めるやつですよね」
「そうだよ~じゃあ私は行くねー」
そう言って倉持さんは走っていきました。
[この学校の狂気は貴様だけではなかったのか。引き留めなくてよかったのか?]
そういうファッションなんですよ!時代も多様性を認める社会に変わりましたし、一風変わったファッションでも受け入れるのがあたしの役目です!そうかと思えば、走ったからか風が強かったからか、途中で髪留めが外れて、ふわっと髪が解けてしまいました。
「う~ん。走ったらすぐとれちゃうな~やっぱり外そ~!」
倉持さんはそう言ってバッグ・クロージャーを制服のポケットに入れました。
「相変わらず能天気な性格の方ですね」
「……」
「なんですか?」
[いや、なんでも]
とりあえずあたしはチャイムが鳴る前に保健室に急ぎましょう。
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