末広がりな二人

水曜

第1話

「どうしたの? 今日は、御馳走だね」

 食卓に並べれた豪華な料理に、私は目を丸くした。

 これらは全て妻が用意したものだった。普段あまり食に興味のない彼女にしては珍しいことだ。

「今日は、あなたの八十八歳の誕生日でしょう。だから、ちょっと張り切っちゃったの」

 白魚のような手には、絆創膏が何枚も貼られている。

 どうやら慣れない手料理に相当悪戦苦闘したらしい。

「そうか。今日は私の誕生日だったか」

「あら。もしかして忘れていたの?」




「米寿?」

「そう、今日はあなたの八十八歳の誕生日でしょう」

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末広がりな二人 水曜 @MARUDOKA

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