「私」「僕」「俺」

@asahikaw

第1話  「私」

「私」は殺された。

いつ、どこで、何が契機で、誰がというのもわからない。私にあった「私」が死んだ。だが、不思議と私の中には焦燥感、不安、憤りを微塵も感じなかった。

そんなことを考えているうちに、家を出発しなければ高校に遅刻する時間になっていた。

「あー、そういえば昨日のうちに今日の授業科目、確認してねー」

 とぼやきながら、部屋という部屋に響きわたるように舌打ちをした。今日の授業科目を先週配布されたプリントで、確認しながら古典、数学、選択理科の地学の教科書をカバンに入れた。

「忘れ物ないよなー」

と自分自身に言い聞かせながら、自分の部屋を出ようとした。その時、壁時計の秒針がカチッ、カチッと空間に響き、私の中にも響いた。

その瞬間、私の中にある何かがざわついた。

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