第3話

ラピス公爵家、ユリア。

ここ、聖ルナティア王国の公爵家令嬢であり、ルディア学園を牛耳る女傑。

緑がかった長い黒髪と、その名の通りラピスラズリのような深い碧の瞳を持つ絶世の美女であり──乙女ゲーム『月の乙女』、通称『ツキオト』の悪役令嬢。


そして、そのゲームは前世における『私』のバイブルであり、ユリアはこのゲームに於ける、私の好きキャラだったのだ。




簡単に『ツキオト』についての説明をしておこうかしら。

といっても、よくある乙女ゲームのひとつで、お金持ち学園に入学した特待生ヒロインを待ち受ける数多の困難と受難を解決していき、最後にはルートの彼と結ばれる……という在り来りなストーリーだ。

ただ、イラストが華麗でキャラがよく作り込まれていたので、ツボる人はかなりツボる。そんなゲームだった為、長年愛され続ける長寿乙女ゲームのひとつだった。


そして、そのゲームで私が惹かれていたのが──ユリアだ。


なんで悪役令嬢?と思うだろうが、単純にヒロインよりも容姿が好みだった事が大きい。

私、ふわふわ系美少女よりもキリッとした黒髪美女のが好きなのよね。


まあ、理由は他にもあるけど、そこは追い追い。

前置きが長くなったけれども、そんな私が『わたくし』に……『ユリア』となれば、だ。



「自分磨きをしなくて何をするのって話よね!!」

「お嬢様、ステップが乱れてます」


只今反復横跳びの真っ最中。これ、結構下半身にキクのよねー。

規則的に手拍子を打つアレクに合わせ、ひたすら下半身を動かし続ける。


毎日学校の終わった後に、わたくしはトレーニング……もとい、エクササイズを続けている。

それも全て、美しい『ユリア』のプロポーションを保つため。そして更に美しく向上させるため!!


勿論この自分磨きはプロポーションに限ったことでは無い。

洗顔や言葉の使い方、口調、歩き方、食事のマナー、勉学、メイク、知識、料理、ダンス、武闘……

思いつく限り手の届く限り、公爵令嬢という立場をフル活用しわたくしは自分を鍛え上げていった。


それもすべて、ユリアのために!!


「うん、今日もわたくしは美しい!」


ああ、なんて素晴らしい生活なんだろう!

悪役令嬢バンザイである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る