第二十二話 嵐を呼ぶ男
作品とは自らを捧げた、飽く事の無い喜びの根源である。
――リヒャルト・ゲオルグ・シュトラウス
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前方のドアが開き、スケバン風の女装姿をした三年の先輩男子・
大手を振ってアピールする
「よっ! おはよう‼」
「お、おはようございます……。」
「いやあ、跳び乗ったバスに
腕を組んで豪快に笑う
「あの、
「おうよ、
中性的な声と顔立ち、女性的な格好が非常に紛らわしいが、「
「御気を悪くされたら御免なさい。昨日からずっと気になっているんですが、どうして女子の制服をお召しなのですか?」
「格好良いから。」
即答かつ簡潔、しかし常人の感性とはかけ離れた回答に、
「格好良い……ですか……。」
「違う言い方をすれば奇抜だろ? 奇抜、つまり個性的。
「は、はあ……。」
解る様な解らない様な理屈に、
「つ、つまり特に
「そういう事だな。だから
自分から誤解させるような格好をしておいて、随分と理不尽な事を言うものだと、
「言っておくがな、
「そうですかね……。」
「ま、とは言っても実際には服装にも規定はある。実際、
「スカートは改造してますよね?」
「まあな。でも
「凄い屁理屈……。っていうか、染髪と化粧は普通にアウトですよね? あと、昨日は気付きませんでしたがカラコンとピアスも……。」
「はっはっは! 何処かの
嗚呼、この人は都合の良い時だけ適当に理屈を付けているけれど筋を通すつもりは無い、そういう身勝手な人なのだ。――
唯、この時
一方、そんな
「しかし、バス通学ってのは楽チンだな。明日から
「え? 今まではバスじゃなかったんですか? まさか……。」
「おいおいおい、幾らこの
「あ、そりゃそうですよね……。」
「停学前までは単車で通学してたんだがよ、今朝もそのつもりで家を出たらお
「そ、そういう経緯でしたか……。」
しかしそれでも、
『
『
そんな中、バスは急カーブして傾斜のある坂道を登り始めた。
「おっ? そろそろ懐かしの我が
「そうですね。」
(
バスは
☾☾☾
バスから降りた後も、
二人は丁度、
『
「
「は、はあ……。」
「
「え⁉」
何気ない強引な御誘いの中で飛び出した言葉に
「な、何だよ?」
「先輩、
「何言ってんだ? 有名だろ? 去年、一年でありながらあの
どうやら
(どういうことだ? 先週、
否、空というより、彼の停学前には無かった建物、
「あ、あああれはですね、先輩……。」
「知ってるよ。奇妙で面倒な事になったんだってな。」
「面倒……いや、厄介と言った方が良いな。まだ当分出て来ねえとは思うが、あそこにはあいつが居る……。」
その眼差しは、
『
「っと、そういや
「じゃ、また後でな。昼にそっちへ行くからよ。」
「べ、別に無理なさらなくても……。」
「行くからよ。」
そして、別れの言葉を唐突に告げた意味も
「な、何て跳躍力……。
『生身よ。』
☾☾
昼前の十五分休み、
「よっ!」
派手な化粧をした女装の男子生徒が登場し、隣同士に
「椅子借りるぜえ?」
「ちょっ⁉」
「
「しっかし、本当に
相変わらず、窓があった壁には机が積み上げられ、その向こうでは
「
「あいつが……。」
「あんなオカマ野郎が本当に
次の瞬間、
「ひ、ひええ……。」
即断即決、
「
「その節は御世話になりました……。」
「
「
「良いって良いって。
「あの、もしかして停学の原因になった喧嘩って……。」
「ん? ああ。
ほんの少しだけ、
「ところで、
「ああ、
「同志、ですか?」
「
「姿勢?」
「ああ、そうなんだよ。」
「ズバリ、『全ての自作を遺作と思え。』これが
「次があると思っていい加減な気持ちで執筆する奴は皆死ねば良い!」
「
「明日死ぬかもしれないと思って自作と向き合え!」
『
「解ってますよ……。」
「いやあ、しかしこっちは落ち着くなあ。新クラスは堅苦しくて敵わん。」
「が、学年違いの部外者が我が物顔で居座る気ですか……?」
「そう言えば先輩、ずっと入院と停学で三年になってから真面に学校来てませんでしたね。」
「そうなんだよなあ。何か一週間くらい休んでた
思いがけず
「登校したんですか⁉
「ああ。後、会計の
『成程、本命の面倒事の方も確り動いている様ね。』
嵐の様な男に振り回されて忘れていた「闇」が不意に
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