【悲報】勇者に転生したワイ魔王の娘に好かれる

プロローグ

皆さんはじめまして！ワイの名前は山田太郎。どこにでもいる一般人。

彼女？野暮なことを聞くんじゃないよ。

見た目？野暮なことを聞くんじゃないよ。

陰キャなワイは陰キャらしく高校生をエンジョイしてたんだよ。

同じ陰キャ仲間とゲームの話やアニメの話、アイドルの話とかで盛り上がってたんだ。

「うわー。キモ。」

っていうクラスの女子の声は聞こえないフリをしてた。

華の１７歳！帰宅部！バイトは本屋！彼女いない歴イコール年齢！告白なんてされたことない！なのに毎年バレンタインはソワソワしてる！

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ってワイのことはどうでもいいんだよ！

そんなことよりもワイは今、転生して異世界にやって来たんだ。

転生した経緯？簡単に説明しようか。

よくある話だよ。道を歩いていたら大きなトラックにひかれてってやつさ。

痛かったかって？正直覚えてないんだよね。

気が付いたらさ、目の前に変なおっさんが居て、いや普通女神とかなんじゃねーの？ってワイも思ったよ？でもおっさんだった。むさいおっさんだった。

で、そんなおっさんが言うわけよ。

「お主は死んだ。そしてその魂は輪廻転生して別の世界で勇者となる。」

まぁ今までに色んなラノベとか読んでたからピンときたね！

あー。よくあるやつかーって。

でもさ、ワイみたいな陰キャが異世界に転生してチートスキルで無双して、俺つえぇぇー！してイキるって、やっぱ一部の人間にとっては夢じゃん？これにハーレムがおまけされるなら、死んだとしてもいいかなーって思えるわけよ。

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というわけで、突然ですがワイは今、異世界へと転生しました。

これから楽しい異世界ライフが待っているのかな？とワクワクが止まらないわけですが、ちょっと最初からハプニングなんだよね。

いや、嬉しいハプニングだよ？

こんなにご都合主義でいいのかな？ってくらい。

誰もが期待するようなエロハプニングね。

目の前には女の子！しかも可愛い！

真っ黒で長い髪の毛に真っ黒な瞳！中学生くらいの見た目だろうか。胸はないに等しい。いわゆるまな板だ。

下の毛もない。ツルツルだ。

ここはどうやら風呂場のようだ。どこぞの国民的アニメで、どこでも行ける扉を開けたらいつも入浴中の女の子に遭遇！そんなシチュエーションを思い出す。

「なっ…なっ…何なのだ貴様はぁー！」

怒られた。当然か。

でも仕方なくない？転生した場所がここなんだよ？

我が愚息も起き上がっている。

「ちょっと待って！なんか勇者に転生したらなぜか転生先がここで――」

「黙るのだ！この変態どスケベ野郎が！」

女の子がスゲー怒りながらこっちに歩み寄って来る。ワイの話も聞いてくれない。それにしてもほんとに胸ねーなぁー。おっぱい星人のワイからしたらもう少し胸があった方が――

ゴチンッ！

「いってぇー！」

ゴッガッゴッ！

………

……

…

はっ！気絶していたようだ。

体中がめちゃくちゃ痛いんだが…

「貴様何者なのだ？」

黒い髪の毛を後ろで一つ結びにして、真っ白な服を着た少女が訊ねる。

「えっと、さっきも言ったんだけど、なんか前世で死んで輪廻転生して勇者になってやって来たんだけど…」

「勇者だと？ということは魔王を倒すのか？」

「多分？この世界に魔王がいるなら、それが勇者の仕事になるんじゃないかな？転生した先が、どういうわけかさっきの風呂場だったんだよ。」

「勇者…勇者か…いやしかしそうか…」

少女は何かを考え込むようにして、またもやワイの話を聞いていない。

「おーい。もしもーし。」

ダメだ。反応がない。仕方ない。とりあえずお暇しますか。ここに居たらまたボコボコにされそうだし。

「それじゃあ俺はこの辺で。」

そう断りを入れたワイは、そぉーっと気づかれないようにその場を後にしようとした。

「決めたのだ！」

背後から少女の声が聞こえた。有無を言わさないというような確かな声だ。

多分だけど、もしかしなくてもワイに対して言っているんだよね。

ワイを殺すとかそんな感じ？

恐る恐る後ろを振り返って少女を見る。

ワイを見てにやりと笑っている。

いや、可愛いよ？可愛いんだけどさ。なんか怖いよね？

「えーと。決めたって何が？」

聞きたくないけど、聞かないわけにもいかない。

「ダリアは貴様の嫁になるのだ！」

何言ってんだこいつ。まだ中学生のくせに何が嫁だよ。だいたいワイもこの年で結婚なんて無理ですー！

いや、可愛いしルックス的には問題ないよ？ワイの年齢がそこそこの年齢だったならオッケーしちゃってるけどさ、まだ高校生だよ？しかも転生したばっかりだよ？

とりあえずこの世界がどんな世界なのか知ってからにしたいじゃん？

それにさ、異世界に来てすぐにこの展開ってことは、間違いなくハーレムルートじゃん？ここで結婚は勿体ないよね？もっと可愛い子や綺麗な子、エロい子がいるかもしれないし。

「悪いな。冗談なら他の人に言ってやってくれ。」

決まった！イケメンセリフ！これでこの子もワイにきっと惚れるはず！

「何を言ってるのだ？貴様はダリアの裸を見たのだろう？責任を取るのが筋ってものだろ？それともダリアの裸を見ておきながら責任すら取らぬと言うのか？」

言いながら拳を握り始めた。

危険な匂いがする。

「ちょ、ちょっと待って！責任を取らないというわけじゃなくて」

「その男は誰だ？」

ワイが言い訳をしようとしたら、背後から渋くて低い声がした。

振り返ると牛のような顔立ちに３本の角を生やした大男が立っていた。

筋骨隆々の上半身は裸で下半身には、ボロ布を巻いただけという出で立ちだ。

明らかにヤバいやつだった。

「えーとですね。俺は」

声が上ずってしまった。

そんなワイの言葉を遮ったのは、ダリアだった。

「パパ！この者はダリアの裸を見たのだ！だからダリアはこの者の嫁になることにしたのだ！」

パッパパァ？お父上でありますか？

ワイ殺されるんじゃないの？しかもこの子、裸見られたとかちゃっかり告げ口してんじゃん！

「なぬ？？ふむぅ。そういうことなら致し方あるまい。」

致し方あるまい。じゃないよ！ワイは結婚しないっつーの！この世界でハーレムを作るんだっつーの！

でも断ったら殺されそうじゃね？

「お主、名は何と申す？」

断ろうかと思っていたのに、なぜか名前まで聞かれてるし…

「えっと、山田太郎です。」

うっかり名乗っちゃったじゃん！

「タローと言うのか！よろしくな！ダリアと呼んでくれ！」

「大切な一人娘だ。しっかりと頼むぞ。」

いやいやいや。なんでそんなあっさりしてるわけ？いくらハーレムルートでもおかしすぎない？

「えーっとですね。まだ結婚とかそーゆーことは決めていないんですけどー。」

恐る恐る言ってみた。

「「何？」」

２人にすごまれた。怖いわ！

「お主。ワシの娘を辱めたくせに嫁にせんと言うのか？」

何でワイ怒られてるの？ハーレム作ろうとした計画がバレた？

「タロー！ダリアじゃ不服なのか？」

「そうかそうか。そういうことなら仕方ない。お主がワシの娘を嫁にしないと言うのなら、ワシにも考えがある。魔王の力を最大限発揮させてこの世界を滅ぼしてくれるわ！」

え？ちょっと待って！魔王なの？ってことはダリアは魔王の娘なの？それって勇者が魔王の娘に好かれたってこと？それってどうなるの？

とにかくこのままじゃヤバい！

「ちょっと待ってください！俺勇者に転生しちゃったらしくて、その勇者が何をする者なのかも知らないですし、この世界もよく知らないですし、とりあえずこの世界を見て周りながら勇者が何をするのかを知りたいんですけど。」

「何？お主勇者なのか？ワシの娘は勇者の嫁になるのか？ふむ。よかろう。」

よかろうじゃねーよ！よくねーだろ！世界のバランスおかしくなるだろそれ。

「それならば、ハネムーンがてらダリアと共に世界一周旅行をして来るがよい。」

「なんだタロー。ダリアと旅行がしたかったのかぁー。旅行してから結婚するってことだな？」

いやちげーよ？

でもそんなこと言えないし、とりあえず口から出まかせで何とかなったしな。

ワイはとりあえず笑って誤魔化すことにした。

こうしてワイとダリア、勇者と魔王の娘の奇妙な旅が始まったのだった。