第6話 七賢者

「一国の王子が他国の令嬢と体を入れ替えるとか馬鹿ですか。いえ馬鹿ですよね」


 氷の巨大像を披露した後、キャロルを牢屋に入れるように指示しフローラの部屋に戻るとそこに待っていたのはロイの腹心セルクだった。

 大陸一の魔術師集団「黒の塔」七賢者の一人。茶髪の端正な顔立ちの男性だ。


「セルク。もう来ていたのか。テレポートですぐ来てくれるなんて、優秀。さすが黒の塔の魔法使い」


 フローラの体にはいったロイがベッドに飛び込んで言う。


「もう来たのかではありません!? 何を考えているんですか!?

 他国のしかも同盟国でもなんでもない国の令嬢を助けるために、転魂の秘術を使うだなんて!?

 サランの薬の魔力暴走に耐え切れなかったら死んでいたのはロイ様だったんですよ!?」


「ほら、俺天才だから。魔力暴走くらい余裕余裕♪」


 フローラの姿のまま枕を抱きながら言うと、セルクは額に青筋をうかべた。


「何が余裕ですかっ!? 

 他人の身体ですよ!? 

 魔力制御がうまくいく可能性なんて五分と五分です!!!!」


 セルクが言うと、フローラの体にはいったロイがにししと笑いながら


「でも、もし俺が危なかったらセルクがなんとかしてくれただろ。だってお前超優秀だし」


 と悪びれもなく言う。その笑顔にセルクがかぁぁぁと顔を赤くした。


「あなたはそうやってっ!

 誉めればなんでもいいというものじゃありません!

 なんでこんな無茶したんですかっ!!」


「この子の父親いるだろ。氷の騎士アレス」


「ええ、魔獣討伐で行方不明と聞き及びましたが」


「実は俺がかくまっている」


「え?」


「氷の騎士が負傷したのは魔獣相手じゃない。

 魔獣を退治したその瞬間のどさくにさに紛れて氷の騎士が連れていた味方に毒の刃物で切られて崖から落ちた」


「それは……犯人はこの国の連中ということですか」


「そうだ!

 で、迷わず崖から飛び降りて抱え込んで助けて俺の部下にしたいと言ったら、娘を救ってくれと頼まれた!」


 どんっ!!と自らを指さして自慢気に言うロイに、セルクが再び青筋を浮かべる。


「つまりまたいつものごとく、人材欲しさに無謀にも自らの命を粗末に扱ったということでしょう!?

 自慢することじゃありませんぅぅぅぅ!!!」


 セルクの悲鳴に近い絶叫が部屋に響き渡るのだった。

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