光を求める

お題 愛の夜 


 暗いな。真っ暗だ。僕は周りを見渡す。何も見えない。ただただ自分が真っ暗な空間にいる。今僕は多分立っている。というか僕には足があるのか。それすらもわからない。足元すら見えないんだ。

 怖い。この感情は間違いなく僕の物だ。何に対して怖いのか。暗い空間に対して?自分が視認できないことに対して?それともなにもかもが分からなくなってしまったことに対して?

 でも一つだけわかることがあるんだ。今は夜だ。何故かそれだけはわかる。証拠も根拠もないんだ。それなのに分かる。

 明けることはあるのだろうか。明けない夜はないとかよく言ったりするけどそれって結局は自分は何もしてない。何もしなくても夜は明ける。時間さえ経てば。

 なんだか僕が僕でなくなってしまうみたいだ。なんでだろう。夜だからかな。夜は好きだ。嫌なことを見なくて済むから。でも怖い。その代わりに何も見えない。

 もうわからないんだ。わからないわからないわからない。自分の思考すら滅茶苦茶だ。

 誰か助けてよ。ここから引っ張り出してよ。早く日が昇ってよ。耐えられないよ。もうどうにかなってしまいそうだ。


 「君の事好きだよ」


 日が昇ってきた。やっとだ。ああ。助かった。



 「もう君の事好きになれないよ」


 暗いよ。もう見えない。

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