88歳のプレゼント

水谷一志

第1話 88歳のプレゼント

 うちのおじいちゃんは、もうすぐ88歳。つまり米寿だ。

そして私たち家族はおじいちゃんに、記念のプレゼントを贈ろうとしている。


 「うーん何がいいかなあ、プレゼント?」

実は私たちは大家族。おじいちゃんもおばあちゃんもまだ元気で、私は父、母と共にみんなで暮らしている。

 それもあり、おじいちゃんにはプレゼントで思いっきり喜んで欲しいのだが一緒に暮らしている分何を渡すのか難しい面もある。

毎日顔をあわせている分、気恥ずかしい面もあるし……。

 でも何かしたい私はおじいちゃん、それにおばあちゃんがデイサービスに行っている間に家族会議をすることを提案した。


 その家族会議で私はいいことを思いつく。

「そうだ!88歳って米寿じゃん?だからそれにかけて、ベージュの服なんかどうかなあ?」

そんなダジャレ、却下!とされそうな所だが、うちの家族は意外とノリがいい。

「いいなあそれ!あとうちのじいちゃんは昔、トランペットをやってたからそういうの喜ぶよ」

「そうなの!?私ブラスバンドでトロンボーンやってるのに……、なんで早く言ってくれなかったの!」

 そう言った冗談を言えるほど私たちは仲が良い。またその会話で私はおじいちゃんの新たな一面を知るのであった。


 結局私たちはおじいちゃんにベージュのベストを買うことにした。店員さんに事情を説明し、プレゼントとして包装してもらう。それを誕生日におじいちゃんに着てもらう……そのことを考えただけで私はワクワクする。


 誕生日当日。親戚の方から誕生日にと小包が送られてくる。

もちろんそれは喜ばしいことなのだが、ここはライバル。良い意味でだが、親戚の方には負けたくない。

 あと念のため、家族総出で先にその中身を確認すると……、【そこには真っ白な上着が入っていた。】


 そこで父が声をあげる。


 【あっ、間違えた!うちのばあちゃんが88歳、米寿でじいちゃんは99歳、白寿だった!】  (終)

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88歳のプレゼント 水谷一志 @baker_km

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