私と食事と思い出

彩乃亜

第1話 ハンガリー



なんてことない日常。

学生の頃は趣味の海外旅行のためにあくせくバイトをしていたが、今やただの社畜。

なんちゃらウイルスとかいうのが世界的に流行ってしまったり、戦争が始まったりしたせいで、もうここ数年は海外旅行なんて行けていない。ま、そもそも会社に休みとかいう概念がないので海外旅行なんて夢のまた夢なのだけどね…


そんな私の最近の密かな楽しみ。

それは世界各国の料理を作ること。

その国へ想いを馳せながら作ると気持ちだけでもトリップできる気がする。

「今日はスープかな…ほかほかのスープとガーリックトーストに決まり!」


今日のメニューは、東欧ハンガリーの伝統的なスープ、グヤーシュだ。

グヤーシュはパプリカパウダーを使って、野菜と牛肉を煮込んだとっても美味しいスープ。

日頃の疲れも吹っ飛ぶってもんよ。

スープだけで飲んでもよし、ガーリックトーストを浸してもよし。

美味しいスープを平らげて、残りのガーリックトーストを摘みながら生ビールをプハッと一気に飲む。

「っくーー!疲れた身体に染み渡る!温かいスープの後に飲む冷たいビールis最高!」

なんとはなしにつけたテレビでは永遠に本日の感染者、先日の感染者数が流れている。




ハンガリーには、確か大学一年生の冬休みに行った。

12月中旬、友人と共にワクワクしながら降り立ったブダペスト。

空港からのタクシーで、かなりぼったくられたのはいい思い出だ。

ヨーロッパ各国を巡る予定だったため、ブダペストへの滞在は3日ほどだったが、とても楽しかった記憶がある。

クリスマスマーケットで、少しお高い料理や民芸品を買ったり、カフェでまったりお茶をしたり、クルーズ船に乗ったり、とにかく三日間、精力的に遊び回った。


グヤーシュスープを飲んだのは、たまたま入ったレストランだった。そこは、ハンガリーのレストランにしては少し高めのお値段だったが、どの料理もすごく美味しくて感動した。お酒の種類も多く、当時19歳で飲めなくて、すごく悔しい思いをしたものだ。

次こそ、ハンガリー産の美味しいお酒を飲むぞ!と友人と誓い合ったのも懐かしい思い出だ。



いつかまた、彼女と一緒に海外旅行に行けるといいな。

そんなことを思いながら、チャンネルを変える。

流れはじめた笑い声をBGMに、静かに酒盛りを続ける。


いつの日か、また海外旅行へ行けることを願って。

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