死にヒロインは青春を知らない〜死者は青い春を眺める〜
ちぇk
プロローグ 僕の目に君は映った
人は美しいものを目に入れたがる。どのように美しいかなど人それぞれ主観ではあるが、それは散る刹那でさえ儚く美しいのだ。それがどんな最後を迎えたのかわからずともきっと綺麗なものだろうと想像したくなる。しかし、その最後に自分たちの想像するような美しい静止画があったとしても、裏に
ジリリリリリリリリリ…!!
目覚まし時計の音が頭に響く。目を開けるといつも見ている天井。寝相によっては壁を向いていたりするがそんなことはどうでもいい。継続して鳴り響く目覚ましを止めることで頭がいっぱいだ。朧気の方向感覚を研ぎ澄まし目覚まし時計を手にとると裏のスイッチをカチッと切った。
「………」
全く知らぬ間に瞼を閉じてしまっている自分に恐怖し急いで体を起こす。
「うぅぅぅぅ…立つんだジョーぉぉぉぉ!!」
気合が入った体はむくりと起き上がり朝食をを欲していることに気づき着替えに取り掛かる…新品の制服に。
何を隠そう今日は入学式だ。自分は今年で高校一年生となる。義務教育との決別。大人の世界に足をつこんでしまったのだ。
いつものように二度寝なんてしていられない。
すると自室のある2階ではなく1階から甲高い母親の声が聞こえた。
「
【
「へーい、聞こえてますよーい!」
最後のネクタイを締め終えると前日から準備しておいたカバンを持って階段をのそのそと降り洗面所へと向かった。そこには普段ならとっくに出勤している父親の姿があった。
「おはよう、柳。お前の制服姿を見るためだけに今日は出る時間を遅くしたんだぞ?」
「おはよう父さん。ちゃんと似合ってんだろ。見たらさっさと仕事いけよ」
「お?なんだなんだ?せっかく可愛い息子の晴れ着を見て感想の一つくらい言ってやろうという父親の粋な計らいにその態度は」
さっきも言ったがこの人は僕の父親である【林道
絶対この人秘書って也じゃねぇだろ…
「顔を洗いに来たんだ、用が済んだなら洗面台変わって欲しんだけど」
父さんはちぇっと吐き捨てた後「では私は出勤するが、くれぐれも遅れないように。」と残して玄関からから出て行った。いつの間にかいつもの仕事モードに切り替わっていた父さんは雰囲気がさっきまでとはまるで別人だった。
また後で会うだろ…
世間的に朝まず歯を磨く家庭もあるらしいが僕は歯磨きは食後に一度すればいいと思っていいるし、何度もするのは面倒だろう。
顔を洗って相変わらずのひでぇ寝ぼけ顔と寝癖を整えると母の待つリビング兼食卓へ向かう。
カリッと焼かれたベーコンと母の得意な半熟目玉焼き、おそらくたった今サクサクに生まれ変わったトーストの香りが断食後の食欲をそそらせる。
席に着いた僕の制服を見てとても嬉しそうな母さんはニコニコしていた。
今僕の制服姿に釘付けのこの女性が【林道
「後30分で出るんだから急いで支度しなさいよね」
「さすがに準備はすましたよ。」
軽い会話を済ますと僕は黙々と食事を取り始めた。
普段からラジオがわりにつけているテレビが天気予報を流し始めると僕もそれに目をやる。
『今日の天気です。八代市は今日から一週間程晴れの天気が続く模様です。』
今日の天気はいいな、いい晴れ舞台になる。
中部地方に位置する三玉県はとても恵まれた土地であり水も綺麗で農業にも向いており、その水が綺麗であることから多くの工芸職人たちが度々訪れてはこの土地に根をおろすのであった。
そしてこの土地には活火山が複数存在してり地熱発電や温泉旅館経営などにも適しているため観光客は後をたたず、人気観光都道府県ランキングでは京都に次ぐ第3位だ。政治家や大手企業の資本家などの別荘や憩いの場としても人気が高いことで認知されている。
そして、八代市は三玉県西部に位置していて僕の住んでいる霞ヶ湯町は割と有名な観光名所の一つである。その人気の秘密は温泉旅館の多さと国宝指定建築物【
【霞雲水元稲荷大社】は湖の中にポツンと建っている神社で水嵩の増減がないとも言われていることから不滅湖とも呼ばれている。事実なのかは知らないが、かつて八代市を襲った大洪水を鎮めた神を祀っているらしい。この神社の地形の珍しさと美しさの人気から年中観光客のやまない大人気の観光スポットなのだ。この神社は地域収入源といっても過言じゃないだろうが僕は一度しか行ったことがない。しかも幼い頃だったから覚えてすらいない。
ここまでこの土地が発展できたのは間違い無く【目黒家】の支援が大きいだろう。目黒家はこの三玉の観光業に深く関わっている資本家の家系であり林道颯の勤め先なのである。
僕もいろんな意味で目黒家には頭が上がらない。
平日の朝っぱらから大手勤めの父親が僕の入学式だってのに早々に出勤して行きやがったことにも理由がある。別に、僕の父さんは息子の入学式なんかよりも仕事が好きな人間であるというわけではない。そのことだけは信じている…
そんな具合に僕の高校生活初の登校時間になった。
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