異世界産の10億円チャーハン
北島坂五ル
異世界産の10億円チャーハン
(1)
食欲をそそるとても強いいい香り!うおおおおっ!それは大谷を狂わせるほどだ。
大谷の最後の食事は昨日の午後に食べたカップヌードルだった。
夕暮れの時間。みんな晩御飯のため家に向かっている。大谷はこの一週間、高校の時の友達の龍太の家に泊まっていた。しかし大谷は家に帰りたくない。なぜならもし彼が今家に帰ったら、龍太はわずかばかりの晩御飯を自分と共有する義務があると感じてしまうだろう。龍太はとても質素で簡単な食事を自炊している。大谷はもう友達に負担をかけたくないと、そう思っていた。
そのいい匂いはどこから来るの?何の香りだろう?何かを炒めてる、もしくは焼いている匂い。肉のようだ。牛肉、それとも鶏肉?
肉以外にも独特の香りがある。これは大谷にはなじみのないものだった。
醤油を焼いている香りがしてきた。やばいっ!彼はめまいを感じる。
大谷は周りを見回した。彼は駅に行く途中だったが、どういうわけか道に迷ってしまった。彼の右側には小さな住宅街がある。左側にはまばらな家といくつかの空き地があり、はるか後ろに小さな森がある。
彼は道端の草を見下ろしている。以前読んだ本で、いくつかの野草は食用であると書いてあったのを覚えていたが、さて、どのような種類のものだったのか…?
大谷は中腰になりながらそれらの草をよく観察し、背負っているギターを肩にしっかりと固定しようとした。
「お母さん!あの男、草を食べてる!」
「近づいちゃダメ、次郎!もう、このあたりどんどん治安が悪くなってきているわ!」
母親は幼い息子の手を引っ張り足早に去りながら、大谷のことを嫌悪感を持ってちらっと見た。大谷はそれを全く気にしなかった。
彼は草を吐き出した。はぁ、全然美味しくない。
きっと明日、もっと空腹になったときにはこれらの草をおいしいと感じることができるのではないだろうか?
大谷は立ち上がってギターを見ている。それを楽器店に売るべき?
いよいよ諦める時か?
「お母さん、見て!あのおじいさん、また料理をしてる!……こっちにおいでって手招きしてるよ!」
「無視しなさい、次郎!晩御飯の時間よ!おうちに帰らなきゃ……言ったでしょう?あのおじいさんは変人なの。あの人から万が一何か渡されても食べてはいけませんよ!病院行きたくないでしょ!」
「……」大谷はその母と息子の後を追います。視界を遮った家を通り過ぎた後、彼はまたその老人に会った。彼は小さな空き地で料理をしている。そこにはガスコンロと中華鍋、そして小さなテーブルと2つのスツールがあった。彼の後ろにはテントが設置されていた。森からそう遠くない場所だ。彼はおそらくホームレス。
何も変わらずこのままいけば、彼もすぐにホームレスになるだろう。
違いは、彼はテント、ストーブ、中華鍋すら所有していないということだ。
その老人は今誰かを手招きしている。
そして大谷は自分が招かれているのだと気づいた。
「……」
躊躇しながらも、大谷は老人のほうへ向かった。
***
チャーハン!醤油チャーハン!
卵の他に、えんどう豆、エビ、チャーシューもある。
チャーシューは2種類の料理になっていた。さいの目に切ってチャーハンと一緒に炒められたもの、それから別の皿には、厚くスライスされたチャーシューがある。
これはなんて良いチャーシューなんだ。チャーハンの中のものは、さいの目に切られていたがそれでも大きな塊だ。そして、チャーハンと一緒に炒めた後でも、柔らかくてジューシーだ。豚のうま味は、大谷が一口一口食べると、力強い海の波のように口の中に飛び散った。
ん…?ホームレスなのになぜこんな上質なチャーシューを買うことができるのだろうか?
まあ、そんなことはいいや。とにかく食べよ。
あたかも無料であるかのように、たくさんのネギがチャーハン全体にまき散らされていた。
少し辛い。でも、赤唐辛子、胡椒、七味の味はしない。別の特別な調味料かもしれない。
そして醤油の味は、少し塩辛く、少し甘く、それと最も重要なことに、少し焦げているので、すべてが完璧になる。それは大谷を飛んでいるような気分にさせてくれた。
大谷は無意識に空のお椀を差し出し、おかわりを求めていた。
「ゆっくりしていってください。まだたくさんありますよ」老人は微笑みながら2杯目のお椀を大谷の前に置いた。
すべての食材は大谷の食欲を旺盛にさせ、それを貪り食べ続けている。香ばしい醤油、ジューシーなチャーシュー、柔らかい卵、ふわふわご飯、うま味たっぷりのエビ、さわやかなネギ……
そして、その特別な風味。この辛さは大谷の舌を少ししびれさせたが、どういうわけか心地よい。そして、それは強烈な香りをも持っている。彼はこれまでこのようなものを味わったことがなかった。
「ねえ、このチャーハンに何を入れたんですか?」大谷の口がいっぱいになり、声がこもった。「この辛みのあるもの。すごく美味しいです!」
「ああ、それは私の秘密のレシピです」老人はくすくす笑う。
「特別な食材を入れました……異世界産の」
大谷は2杯目を食べ終えるまで話さなかった。
そして、やっと老人が言ったことに気づき、大谷は目線を上げた。
「え?」
老人は微笑んだ。
「おかわり?」
(2)
次の夜、大谷はまた老人のところへ晩御飯に向かった。
遠くからでも、醤油炒めの少し焦げたような心地よい香りがする。ああ、お腹すいた!
そして、その特別な辛さのなんともいえない刺激的な香り、その驚くべき秘密の食材……大谷は足早に歩きはじめた。
大谷は小さな折り畳み式テーブルの前に座り、皿の上のチャーシューとボウルの中のチャーハンを畏敬の念を持って見ている。醤油が絡まった少し茶色いご飯がキラキラと輝いている。これは芸術作品だ。
「どうぞ」老人は微笑み、彼もまた自分のチャーハンを持って座った。
大谷はガツガツと食べる。
ご飯の一粒一粒には独自の生命があるかのようだ。卵は絹のように柔らかく、チャーシューは肉汁がたっぷり入っているので、軽く噛んだだけでも熱心にそれが出てきた。エビは彼にそれらを噛むように懇願し、それからさらに噛んだ。
えんどう豆は、けらけら笑って、すべてをまろやかにする。
ネギは歌いながら、彼がまだ生きていることを思い出させてくれた。
醤油!
そして、その驚くべき辛さ!
「本当に、この特別な食材は何ですか?」3杯目のお椀受け取った後、大谷は尋ねた。
老人は自分の箸を置き、後ろのテントに入っていった。老人が戻ってきたとき、彼は大谷の目の前に手のひらを差し出してきた。その上には何かの種がのっている。それともドライフルーツ?
「これらは『異仙種』と呼ばれています」
「えと……あなたはこれらを異世界から持ち帰ってきたのですか?」
老人はうなずく。「私は殺されそうになりながらもこれを手に入れました」
「へぇー……」大谷はそれらの不思議な種をじっと見つめる。
「冗談だ!」と爆笑しながら種をテーブルに置いた。「これらは異世界のいたるところで手に入ります!」
「ははは……でも……チャーハンには入っていないようだけど」
「ああ、これらは香り付けのために最初に油で揚げただけだったので、他の材料を入れる前にこれは取り出すからね」
「そっか」口ではわかったようなそぶりを出したけれど実は、大谷はその老人が話している内容を理解できないでいたが、大谷は特に大きな問題ではないと気にしなかった。
今の彼に必要なのはチャーハンのおかわりを頼むことだ。
老人の名前は小杉。晩御飯の席で、彼は大谷に異世界での冒険について語り始めた。
「……ですから、すべてのさまざまな獣女の中でも、犬女は仲良くするのが最も簡単です。猫女はしばしば激しい気性を持っています」
「へぇ……」
そして、小杉さんは大谷に、ドラゴンを飼いならす方法、ゴブリンが後ろを刺すのを防ぐ方法、妖精があなたに魔法をかけた疑いがあるときにそれを確認する方法、ドワーフにあなたとチームを組むように説得する方法、ダンジョンで迷子になったときに生き残る方法について語った。
「……最後に、私は十分な宝物を手に入れ、戻ってくる時が来たと結論付けました」
「じゃ、あなたはその宝物で大金持ちになったんですか?」大谷は、老人のぼろぼろの服、テント、後ろの森をちらっと見ずにはいられなかった。
「まあ、生活するぶんには十分です」小杉さんは笑う。
「それで一人でここに住んでいるんですか?」
「そうですよ。ここに一人です。この森は、かつて異世界に住んでいた森を思い出させるので、ここに住むことにしました。似ているんですよとっても!」
「そうなんですね……えっと…、小杉さん、どうもありがとうございました。これは間違いなく僕が今まで食べた中で最高のチャーハンです。この料理に名前を付けるべきですよ!」
「もうありますよ」小杉さんはにやにやと笑っている。「その名前は……『異世界産の10億円チャーハン』」
「おおぉ!……すごい名前ですね!」
「だろ?……ちなみに、あなたの職業は何ですか?話したくないなら大丈夫ですよ」
「かまいません」大谷は背筋を正し言いました。
「歌手です」
(3)
「……だから、心が痛んだけど、もっと高く飛んでいくよ……」
大谷がギターの最後のコードを弾くと、数人の歩行者からの拍手喝采を浴びた。大谷が地面に置いた帽子に女の子が小銭を入れてくれた。
「おい、前回あなたに言ったはずですよ?!ここでのパフォーマンスの許可が取り消されています。ここで演奏することができなくなっているんです!」
地元の警官がイライラした様子でやってきた。
「ねぇ、警官様!僕の許可を取り消したのはアンフェアですよ!」
「路上で喧嘩するべきじゃなかったですね!」
「それは僕のせいではありませんよ!あの酔った男は僕に嫌がらせを続けた。あいつは僕におしっこをひっかけようとしたんだ!」
警官はため息をつき、少し同情しているように見える。
「まあ、おそらくまた来月になればここで演奏できるようになるでしょう。今は少しおとなしくしていなさい」
「でも――」
「逮捕されたくなければ、今すぐ立ち去りなさい!」
(4)
「おぉ!あなたは慶應を卒業したのですか?とても素晴らしい!」
小杉さんはあまり食べない。大抵、彼は大谷の食べる様子を楽しんでいる。
一週間が経ち、大谷はここで毎晩夕食をとるために通った。
「私は勉強がとても苦手でした」小杉さんは笑う。「私は動くことが好きだった。外に出て世界を探検するのが好きでした。そして、異世界に行き着いたんです」
「……」大谷は小杉さんの話に注意を払っていなかった。彼はチャーハンにとても夢中だ。醤油、チャーシュー、異仙種。それらが合わさり魔法がかけられる。今まで気づかなかったが、米は確かに世界で最高の食べ物だ!
もっとチャーシュー!
もっとチャーハン!
少し焦げた醤油の香りと、異仙種の心地よい刺激的な香りが合わさって、見えざる手に変身します。その手は大谷の頭を撫で、赤ちゃんのように頬を抓り、独楽のようにぐるぐる回す。大谷はそれが彼を支配することを受け入れた。
この異仙種、それはもしかしたら中毒性があるのか?どうして彼はそれを欲しがるのをやめられないのだろう?
やがて大谷は考えるのを諦め、ただ食べて食べて食べ続けた。
もっと。彼はもっと欲しい!
最後に、7杯目のおかわりの後、大谷はもうここでやめとくべきだと決めた。
同じ中華鍋を使って、小杉さんはあっという間に味噌汁を作った。
大谷は温かい美味しい味噌汁を飲みながら、小杉さんに音楽のキャリアを追求するために両親とどのように議論したかを語りはじめた。
「父は怒っていました……僕に良い教育を与えるためにその間ずっと一生懸命働いていた、そして父は僕がすべてを無駄にしている、と言いました。母はため息をつき続け、真面目な仕事を探すように言い続けました……それで僕は家を出ました。2年間、レストランで生計を立てながら…。しかし、3か月前にそのレストランは廃業してしまいました。それからは家賃を払えなかったので、アパートから追い出されました。幸いなことに、友人の龍太が家においてくれました」
「新しい仕事を探していないのですか?」
「ほとんどの時間を曲を書いたり、路上ライブをする時間にあてたかったので、自分の都合のいいバイトを見つけるのは簡単じゃなかったですよ。ああ、でも最近ようやくコンビニのバイトが決まりました!」
小杉さんは微笑んでうなずく。
「大谷君、私のために歌ってくれませんか?」
大谷はギターを手に取り、自分が書いた曲をいくつか歌った。
小杉さんからは拍手喝采。大谷は笑みを浮かべたが、すぐに顔が戻った。
「でも、龍太でさえ、最近になってそろそろ大人になる必要があると言いだしてきたんですよ。龍太は大企業で安定した仕事をしているんですが、とても倹約家で。彼には彼女がいて、彼らは3年以内に結婚する予定なんです。それで彼は家を買うためにお金を節約しています。龍太は自分の将来を非常に慎重に計画してきました」
大谷はギターを軽く弾いた。
「たぶんそろそろ僕も大人にならないといけない時が来たかな」
「でも大谷君、大人になるってどういうことだろう?」
小杉さんは微笑む。「私があなたくらいの年齢だったときも、周りの人たちはいつも私に大人になりなさいと言いました。でも、私は自分が何をしたいのかを知っていました。そして異世界に行って宝物を持って帰ってきました。年をとった今、人々は私に年老いた愚か者のように振る舞うのをやめるように言い続けてきます。それから私が狂っているとも言われ続けてきました。あ!わかってるよ、あなたでさえ私が狂っていると思っていても、ね?」
「いやいやいや……」大谷は罪悪感を持って目をそらした。
「大丈夫ですよ。とにかく、彼らは私に普通の人のように生きるように言ってきました。しかし、何が普通ですか?」小杉さんは少し興奮して声を上げます。「大谷君、他の人の言うことは気にしないで。これがあなたの人生です。これが大谷君が本当にやりたいことであることを確認してください。もしそうなら、それにしがみついてください。あとは、わかりますか?――」
小杉さんは前かがみになり、秘密を共有する口調でささやく。
「異世界で成功するのはあなたのような人々です」
(5)
「……飛翔は危険、知っている。空は危険、知っている。でも、大地は十分ではない……」
午後の日差しを浴びながら、大谷はウキウキしている。ついに、彼は再び路上でパフォーマンスをする許可を取得したのだ。
彼がギターの最後のコードを弾くと「ありがとうございました!」
今日の観客は太っ腹だった。たくさんの小銭。いくつかの紙幣ですら。大谷はにっこりと笑顔だ。
そして、大谷は男が彼に向かって歩いて来るのに気が付いた。
以前大谷と喧嘩をしてパフォーマンス許可を奪った男だ。
大谷は緊張し、もう二度と喧嘩ないと自分に忠告し、必要に応じて立ち去ろうと考えていた。
「……」男は大谷を見つめ、上着のポケットに手を伸ばした。
そして、名刺を取り出した。
***
「そうそう!彼は音楽プロデューサーだったんだ!そして彼は私とレコード契約を結びたいと言ってきたんだよ!」
空き地に向かって走る大谷は、龍太に電話で朗報を告げた。
「えっと、あの日、彼はビジネスパーティーで飲み過ぎていたみたいなんだ。彼は僕の音楽を聞いて気に入ったらしいんだけど、酔ってたからふざけすぎちゃったみたい。とにかく、後で戻ってきたらもっと詳しく話すよ。じゃ!」
大谷は空き地にたどり着き、ワクワクした。小杉さんと朗報を共有するのが待ちきれない。
「……」
小杉さんがいない。代わりにたくさんの男たちがいる。彼らは小杉さんのものを動かして持ち去っていった。
「おい、何やってんの?!」
大谷は怒って前に走りだす。「弱い立場の老人から盗むなよ!警官呼ぶぞ!」
明らかにそこで担当している、高そうなスーツを着た中年の男が、大谷を振り返り大谷を冷たく見つめる。
「どちら様ですか?」
「僕は……僕は彼の友達です!小杉さんの友達です!……あなたは誰ですか?」
「私は小杉さんの執事です」
「……え?」
「小杉さんは本日早くに亡くなりました」
「亡くなった?一体どういうこと?!――」
作業服を着た二人の男が担架を背負って通り過ぎ、その上に小杉さんが横たわり、目を閉じていた。
「ご覧のとおり、彼は本当に亡くなっているんですよ。心臓発作でした。だから私たちは彼の遺品を片付けて、彼の家に戻す作業をしています」
「彼の家?でも、彼はホームレスじゃないんですか?」
「ホームレス?この周辺にあるすべての空き地――」執事は手でジェスチャーした。 「そこにある森もすべて、彼の財産です」
大谷は周りを見回し、今まで気づかなかったいくつかのことに初めて気づいた。電灯があり、発電機のように見える機械がある。屋外用簡易トイレもある。彼からそう遠くないところに、棚に飲用水のタンクもいくつかあった。
「彼は自身の希望でここに一人で住むことを選びました。彼は外での活動がとても好きな方でしたから。それともう一つ、自分の財産ばかりに目を向ける子供たちにうんざりしていましたからね。それでも、私の意見は極端すぎます。何と言えばいいでしょうね?お金持ちは変な方たちが多いです」
「……」
「数日おきに、私は彼の食料を補充するためにここに来なければなりませんでした。そして、彼は注目されたりするのが好きではなかったので、私は深夜に来なければなりませんでした」
作業服を着た別の男が、いくつかの大きなカートンを持って彼らを通り過ぎる。小さなビニール袋が地面に落ちた。大谷はビニール袋の中身を見て指を指した。
「ああ、異仙種!気をつけて!それ貴重なものです!」
「異仙種?」執事はビニール袋を手に取った。「これらが?」
「そう!小杉さんはそれを異世界から持ち帰ってきたんです!」
「これは花椒です。中国の四川料理で使用される人気のあるスパイスですよ」
「……異世界産のじゃないの?」
「違います。インターネットから購入しました。最近はすべてインターネットから購入できますからね」執事はビニール袋の中の花椒に物憂げに微笑む。「彼はいつもエキゾチックな調味料が好きでした。 2年前はサフランでした。昨年はハラペーニョでした。そして今年は……まあ、来年は新しいものはありません。変だけど、彼はいい人でした」
「じゃ、小杉さんは本当に大金持ちだったんですか?でも、どのくらいのお金持ち?」
「彼の資産は10億円以上ありました」
黒いバンが空き地に乗り込み、小杉さんの遺体を運んで待っていた二人の男の前で止まります。慎重に、彼らは遺体をバンに入れた。
「それでは」執事は向きを変え去ろうとする。
「まってください!」
執事は引き返した。
「じゃ、彼は…本当に異世界に行ったんですか?」
執事は大谷を見つめます。
「ねえ、ボス、この大量の小説どうしますか?」
作業服を着た男性の1人が、2つの巨大なゴミ袋を地面に投げ置いた。袋には本がぎっしり詰まっている。大谷が一袋開けて、1冊の本を取り出してすばやく閲覧した。異世界についてのライトノベルだ。彼は別の本をチェックした。それから別の……それらはすべて異世界についてのライトノベルだったのだ。
「それらをリサイクルに出しましょう」執事は特に興味がないように見える。
「ええと、息子はこのジャンルのものを読むのが好きなので、いくつかを家に持ち帰ってもいいですか、ボス?」
「すべて持ち帰っていいですよ」
「……」大谷は執事をじっと見つめ、執事は彼に笑顔を向けた。
「さあね?」執事は答える。 「多分彼は本当にそこに行ったのでしょう」
そして彼はバンに乗り込んだ。
バンが走り去ると、大谷はお辞儀をした。
彼はゆっくりとそこから立ち去る。
突然、あのチャーハンのいい香りがまた現れました。大谷は深呼吸します。そう、彼はそれを嗅ぐことができる。とても強い。とても良い。
醤油炒めの香り。そして花椒の。
いいえ……異仙種。
大谷はギターを肩から外し、それを見て微笑む。
彼はお腹がすいている。それでも、彼はみなぎるパワーを感じていた。
ギターを肩に乗せて、大谷はまた歩き始め、今度は大きな一歩を踏み出した。
「……だから、心が痛んだけど、もっと高く飛んでいくよ……」
異世界産の10億円チャーハン 北島坂五ル @KitajimaSakagoru
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