クラスの優良物件はお高くつくらしい。

たくみ

第1話 1月13日

「Please,two person rotation」

 先生がそう発した。クラスのあちこちから

「Nice talking to you.」「Nice talking to you ,too」

 と声がする。今日は1月13日。3学期が始まってから最初の週1回の英語表現の時間だ。私の通う中学校は県内でも上位の中高一貫であり、総合的に英語を学べるよう、週に一度の表現の時間を設けている。現在カリキュラムに余裕があるらしく、授業開始から40分が経過しているが、それは全てスピーキング活動に使われた。



 先生の指示通りに2人分、前に動く。

「Please,do janken.」

とりあえずペアになったクラスの西山くんとじゃんけんをした。

「最初はグー、じゃんけんぽい」

私はパー、西山くんはチョキを出した。

「負けた人は座りましょう」

なぜかここにきて先生が日本語で喋る。


私は負けたので椅子に座った。何もせずに過ごすには心地の悪い間があったので彼の様子を伺ってみた。下から彼の顔を覗くと、大きく目を見開いて上から見下ろされた。いわゆるガンを飛ばすみたいな感じで。私はその目に釘付けになってしまった。大きくて丸く、少し垂れた目が私をじっと見つめている。

胸の鼓動が少し大きくなったのを感じた。身体の奥でじわじわと血液が巡る。内側からじわじわと体が温まっていく。地に足がついてない感じがしてふわふわした。

やばい。やばすぎる。

でもそんなことは誰も知る余地がないので、私は平然を装い、彼に対抗して目を大きく見開いてガンを飛ばす。


「じゃあ今から5秒間ペアの人と目を合わせてください」

追い討ちをかけるように先生が指示する。

彼の目を見つめると、さっきと同じ大きくて丸い目が私を見つめていたので、私はとりあえず深呼吸をした。顔が熱を帯びている。


その後のスピーキング活動は普通にこなしておいたが、頭の中でぐるぐると何かが駆け巡り、意識がないと言っても過言ではないくらいだった。


 授業終了を告げるチャイムが鳴り、その場で号令と挨拶を行ったあと、私は元の席に戻った。







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