Go WEST!

TiLA

1/2の旅人

 透き通る風が耳をくすぐる。


 北と南に続く道があった。

 さてどっちに進むべきか。

 俺はコインを取り出しピンっと弾いた。


 回転するコインを手の甲で受けようとしたその瞬間、白い腕がすっと伸びてきて俺のコインを掴み取った。


「西よ! 西に行くから付き合いなさい!」


 見ればとびきり良い女がブロンドを輝かせてそこに立っていた。


「なんで東じゃなくて西なんだ?」


 俺がそう聞くと


「わたしが東から来たからよ」


 そう言って女は道を外れ、西の荒野に向かってスタスタと歩き出した。


「おい待てよ! 俺のコインを返してくれよ!」


 俺が叫ぶと、女は


「ちっ! コインの一枚や二枚で小さい男ね」


 と冷ややかな目でこちらを睨み返した。


「コインはどうでもいい。表か裏かで道を決めてたんだ。せめてどっちかだけでも教えてくれ」


 俺がそう言うと


「だから西へ行くって言ったでしょ? 早く付いてきなさい」


 そう言って女はまた歩き始めた。


「ちょい待てよ! なんで俺が付いていかなきゃならないんだよ⁉︎」


 とりあえず俺は駆け出し、女の後ろに続いた。


「コインで選ばなきゃ決めれない道なんて、どうせ進んだってロクなことないわよ」


 そう言って彼女は髪をかき上げた。


 透き通る風が彼女のブロンドを靡かせる。


 たぶんこれは夢だろう。おかしなおかしな夢だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る