第8話 軍事訓練Ⅰ

「おはようございます、サリ様」

それはとある朝のこと。

侍女長が私を起こし支度を手伝い、護衛騎士シェーンがあいさつに訪れた。

その後侍女長が少しの時間自室を離れる間、シェーンと私は二人きりになる。

私は自室の椅子に腰を下ろし、シェーンは扉の左側に直立不動でまっすぐ立っている。

話しかけるなら今しかない。例のあの件だ。

「シェーン」

するとシェーンは少しビクッとなりながらも、すぐに平静を装った。

「何でしょうか、サリ様」

普段私から話しかけることがあまりないからか油断していたのだろうか。少しだけ、その様子がお茶目に見えた。

「ちょっと頼みがあるのです」

ジッとシェーンを見つめる。やはり、見つめられることにも慣れていないのだろう。口元に軽く握った拳を当て咳ばらいをし、動揺を隠そうとしている。

「要件によります」

やっぱりな、と、思った。

恐らく私が面倒ごとに巻き込まれないように私からの要望は一旦侍女長の耳に入れる仕組みになっているんだろう。抜かりのないお人だ。

「大丈夫、危険なことではありません」

これは本当のことだったが、シェーンの眉が少し歪む。だいぶ侍女長から私の人となりを叩きこまれている様子だ。

「要件は、軍事訓練を見学させて頂きたいのです」

シェーンの顔の緊張が一気に緩んだ。少し、嬉しそうでもある。

「サリ様は、国軍に興味がおありなのですか?」

初めての講義の後のエリザベスとの会話で感銘を受けたのは事実だった。とても興味があるわけでは正直ないが青の騎士には会っておきたかった。

「公爵家のエリザベス嬢から、この国の騎士のレベルの高さを聞き、興味があったのです」

正直に気持ちを伝えたところ、シェーンは、「そうですか」とほほ笑んだ。

「軍事訓練を見学させてもらえるなら、エリザベス嬢も一緒にいいかしら?」

無理強いはできない。シェーンの立場もあるだろう。

「団長様に許可を取れば問題はないと思います、城外への遠征もあるので」

よかった、と胸をなでおろす。

「あと、その時、青の騎士に少しお時間をいただきたいの」

侍女長が準備してくれていた紅茶を少し口に含む。

「エリザベス嬢が彼にとても救われたらしくてそのお礼を伝えたいんですって」

紅茶から顔を上げシェーンを見た途端、紅茶を零しそうになった。

さっきまでの嬉しそうな顔から表情筋がバグを起こしたようなちぐはぐな表情になっていたのだ。笑っているような、困ったような、今にも泣きだしそうな。

「・・・このことは国軍内と国王しか知らないのですが・・・」

歯切れの悪いシェーンを見て嫌な予感がよぎる。

「青の騎士は、先の大戦後、軍事パレードの日の早朝に」


「息を引き取りました」


















































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