あなたと、一緒にいさせて下さい
OFF=SET
第1話
恋愛は嫌いだ――――
自分が出来なかったひがみなのか――――
恋愛とはどんなものなのか、
でも、私にはもう――――
「またそんな恋愛ドラマかい?」
夕食時、息子の嫁に嫌味を言う。流行っているのか分からないが、このような物を見て、心を高ぶらせられるものなのか。
「あ、ごめんなさい、お母さん……」
テレビを消す息子の嫁、八十八歳を迎えた私の体は、腰が曲がってしまったが、足もまだ動く、まだ元気だ。
「母さん、別にいいだろ、テレビくらい」
息子も嫁に取られてしまい、孫娘は結婚して正月とお盆食らいにしか会えなくなった、連れ添った主人の最後も看取った。
毎日が一人になった。
老人会という集まり意外は大体が散歩して、時代劇を観て過ごすのが日課だ。
「ふん、恋愛は嫌いだよ」
二世帯住宅にしたのは、息子は親孝行したと思っているのだろうが、それは息子の自己満足に過ぎない。
私は一人でも大丈夫と言った筈なのに、体がどうのやらと口うるさく言ってきた。全く、息子のくせにいつからこんなに言うようになったのか、こんな息子に育てたつもりは無かったのだが、こうなっているのだから、私が悪かったのか? なんて考えると「ふふん」と、鼻で笑ってしまう。
「あ、母さん、今度の旅行、どこがいい?」
「そうそう、お母さんの好きな所にしましょうよ」
「そうかい、そうかい、じゃあメガネ岩ね」
「メガネ岩?」
息子夫婦が顔を見合わせている。分からないだろうね、どうせ無理だろうね、
「行きたいね、メガネ岩」
「どこにあるの?」
「トシちゃんの家の先だよ……」
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