親へ送る青の薔薇

ミコト

前編

「ただいま~」


 リビングまでの廊下が遠いため

 親には聞こえていない。


 高校生になっていままでの感じた思いを親に送るため2輪の青の薔薇の花を持ち廊下を歩く。


 自分は親が嫌いだった。

 何故ならすぐに怒るから。

 今となっては自分が身勝手なのが良くわかるがその時の自分はワガママだった。


 毎日悪いことをして親に怒られての繰り返し。

 自分が悪いのが頭の中で分かっていても違うと否定して趣味や好きなゲームへと走った。


 だからだろうか?

 自分は段々と親から距離を取り始めた。

 親の話しを適当に返す様になった。

 怒られても何も感じなくなった。


 親と関わるのを嫌いになった。


 中学生になって1 2年と過ぎて中学3年生。

 進路の話が出始める。

 中学3年生にでもなれば嫌でも考えないといけないと思う様になるがこれまでの人生

何かに集中する事がなく受験勉強はとても

辛かった。


 だからだろうか?

 自分は初めて親に大きな声を出した。

 リビングにあるテーブルで。

 親の一言で理不尽な自分は親に怒った。


 そこからは一方通行で、最早ただの独り言だった。言いたいことをガンガン言って声をあげては目の前でハッキリと嫌いと言って部屋を出た。

 僕は初めて親に大声を出して本音を話した。


 そこから先は良く覚えていない。

 自分の部屋に籠り好きな事して怒りを無理やり抑えた。


心の中は真っ黒な雲に覆われていた。

 


ただそれだけだった






 目を開ける。

 何故か今日は良く眠れず、窓を見ると真っ黒な夜の世界。時計を確認すると深夜1時。

 喉が渇きリビングに行くと明かりがついている。親がまだ起きているのか?と内心イライラしながらその場で回れ右。

 また寝ようと思ったとき、声が聞こえた。


 声は嫌と言うほど聞いた親の声

 だけどまるで泣いている声で

 どうせ親に声を出した事で悲しんでるんだろうと思いそばで聞き耳を立てる事にした。





「よかった...ホントによかった!」

 私は父の前で声を出して泣いていた。

 息子に嫌いと言われて...ではない。

 むしろその逆、嬉しかったのだ。

 夫も涙こそ流してないが

「あいつはいつも悪いことをしては怒られてきたのに何も言わなかった。なのに私たちはあいつが一度も声をあげた所なんて見たことがなかった。普通なら親に毎日の様に怒られて、嫌いになるはずなんだ...実際あいつが何も言わなくなっても嫌ってたのは分かっていた...だけど!どれだけ怒ってもどれだけ叱ってもあいつは言い返してこなかった!間違って怒ってしまったときも何も言い返してこなかった時に私達は不安になった。」

 感情を抑えた夫は誰かに話す様に。

「今日やっと聞けた...やっと声を出してくれた。それだけで価値があった。話しを聞こうとしてよかったわ。」

 夫と話してずっと不安になったいた事

(私たちは息子から本音を初めて聞くこと)が出来たのだ。

 周りから見れば変な人に見えるのだろう。

 本来目の前で堂々と嫌いと言われて

 嬉しいはずはないのだから。

「だけどあいつは大丈夫なのだろうか」

 元の様子に戻った夫は不安そうにしている。

 本音を聞けた事は嬉しかったけど

受験に関しては不安って所かしら。

けれど私たちは何も出来ない。

 元々15年間も一緒にいたのに一度も本音を聞いたことがないのに今さら何か手伝おうとするのはお門違いだと思う。

 だから私は


 私達は...


「見守りましょう。」


 夫がこちらを見る。

「今はどんなに不安でも見守りましょう。

 それが今の私達に出来る事よ。それに受験に失敗してもそれを支えるのが」

 息を吸って

「親の仕事でしょ?」

 私は夫に向かって微笑だ。

 今の私が出せる最高な微笑みだと思う。

「...そうだな。僕たちはそっと見守ろう。」

 そうして私達は互いのてを触れて

 その時間を過ごしたのだった。







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