第10話過去

僕は公園で缶コーヒーを飲みながらタバコを吸っていた。

「黒井川さ~ん!」

堀が走ってくる。

「探しましたよ!黒井川さん」

「ここにいるって言わなかったっけ?」

「そんなこと聞いてませんよ!」

堀はタバコの煙に、目をしばしばさせている。

「なんか、分かった?」

「はい。15年前にこの病院の事務長が自殺してますね」

「何で?」

「長年の使い込みがバレて、トイレで首つってます」

「そうか」

「後は、大きな事はないですね」

「今、何時?」

「え~と、5時過ぎです」

「もう、そんな時間?僕は帰る。明日ね」

「黒井川さん」

僕は無視して帰った。


看護師の北園が夏木の部屋に入った。点滴の交換だった。

「君。今、この病院は事件に巻き込まれているようだね」

「は、はい」

「実はオレ、フリーのライターでこの事件を取り上げようと思ってんだ」

北園は無言で作業している。

「オレの家族を殺した病院だからね」

「……」

「君、この病院の事詳しく教えてくれないか?」

「私は去年から働いているので、昔の事は知りません」

「そうか。悪かったな」

「戸川先生に聞いたらどうですか?警察の方とも親しいので」

「ありがとう」

北園は部屋を出て行った。

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