下町ご近所さん

なぎこ

第1話 KAC20228「朝のヒーロー」

朝7:00

「おはようございますっっ!!」

「いらっしゃいませええーー!!」


ここは居酒屋か?と思わず時計を見そうになる朝のコンビニ。

多くの人は、朝のテンションは低めだ。

そんなの知るか!今日も元気にいくぞ!というような、元気で大きな声で

少し曲がった腰のおじいちゃん店員の挨拶が、店内を明るくしてくれる。

見ているだけで元気が出るし、失礼かもしれないが、とてもかわいくて癒される。


おじいちゃん(以下仮称で「吉田さん」とする)には、毎朝同じシフトの相方のおばさま(以下仮称で「渡邊さん」とする)がいる。

初めは、元気すぎる店内・吉田さんとさん渡邊さんの関係性について、疑ったりしていたが、二人の掛け合いは見事で時に面白く、ずっと見ていたくなる。


初めは元気すぎて、耳キー――ンってなるし、歩いて行くの面倒だな、あのコンビニ・・と思っていたが、だんだん、お二人の顔を見ると、ホッとし、気が付くと1日のパワーの源であり、朝の私の心のヒーロー達となっていた。


特に吉田さんはクリスマスシーズンになると、寒空の下「チキン」をサンタの帽子をかぶり反対車線にも届く大きな声で売っていたり、お客さんの要望に素早く応えようとする姿に、今日もがんばろう!とパワーをもらっていた。

時に吉田さんは、私の購入したスポーツ雑誌の裏に掲載された「腰痛に効くコルセット」の広告を会計時、ずっーーーと見ており「立ち仕事やし、腰痛いんかな・・?」と母性本能をくすぐる部分も持っていた。その日から、「お休みの日は何をしているんですか?」など、吉田さんとプライベート話がしたくて、ウズウズしている。


そんなある日。

いつものように、明るい店内で、私は引き立ての豆で飲むカフェラテを購入しようとコンビニに設置されている機械にセットした。すると、ミルク抽出後、変な機械音がするので、店員さんを呼んだ。店員さんは、渡邊さんでも吉田さんでもない、新しいパートさんだった。

私は、新キャラ登場に身構えたが、吉田さんを今更指名できない。覚悟を決め、

事情を説明した。

「機械音がすごいんです。私、変なボタンとか押しちゃったんですかね・・?」


すると、新しいパートさんはソプラノ歌手のような軽やかなリズムで

「ミルクがないのね~!大丈夫よ!ビックリさせてごめんなさいね!

あなたのミルクは大丈夫?大丈夫そうね!よかったわ~♪」

と、ものすごい流れで、確認された。


安心感と、このコンビニは裏切らない最っ高!と朝とは思えない高揚感が、私の心を襲う。低血圧の私にとって、このコンビニそのものが朝のヒーローである。

今日もヒーローたちに元気をもらい、1日が過ぎていく。

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下町ご近所さん なぎこ @aikororo1226

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