第一部【少女サクラ編】
第1話「都会暮らしの少女」改4.00
ボーン、
ボーン、
ボーン。
みゃあ、
みゃあ、
みゃあ。
ポートタウンの港から、船が出航した。
船のそばで、やかましく海猫が鳴いて飛んでいる。
大都会のポートタウン。
外の世界へ旅立つように、船は港から離れていった。
桟橋に留まっている、鳥が飛び立つ。
そいつは、港から北にある市街地の上空を飛んだ。
街の中心から商圏が広がる。
その様子を鳥はうかがっているようだった。
一本のある通り。
駅へと続くその通り。
一人の少女が駅の方へと走っていた。
駅から出てきた、これから仕事がはじまることを想像している群衆をかき分け、
少女はホームへと駆けていく。
・・・・・・。
鳥はその様子に飽きたのか、
港の方へと引き返して飛んでいった。
少女は走り続けていた。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
息が切れそう。
朝の通学時、駅のホームにて。
高校生の少女、サクラは電車に乗り遅れまいと急いでいた。
肩を越えて伸びたロングの黒髪。
冬服の厚手のセーラー服に身を包み、
胸元には赤いスカーフを身に着けている。
黒い瞳。
潤んだ瞳。
細く垂れ下がった眉毛。
髪をまとめる、細いリボンの付いたシュシュを身に着け、
それが揺れている。
階段を駆け上がり、ホームから降りてくる乗客をかき分けていった。
その時、
相手の肩にぶつかったけど、黙ってそのままやり過ごそうと思った。
発車しそうな電車に乗り込もうとする。
「おい、ぶつかっておいて立ち去る気かよ!」
まずい。
ぶつかった相手は、サラリーマン風のスーツ姿の男だった。
がんつけられている。
電車は発車してしまった。
ホームを滑り出す。
男はイライラしているようだった。
我慢が出来ずに怒鳴っているのだろうなとサクラは思った。
サクラはおどおどして立ち止まる。
見ると、この男はかなり怖かった。
顔が上げられずに、しっかりと目を見ることが出来なかった。
体は固まったように動けなくなる。
「なんだよ、謝りもしないのか。たくっ、これだから最近の高校生は」
サクラに近寄って、上から目線で大声だった。
かなり怒鳴っている。
男の表情は血管が浮き出そうになるくらい、クワッとした顔なのだろう。
男はくどくどと言い始めた。
最近の高校生はなってない。
そのことがサクラは気になった。
多分、気にくわないことに出くわすと、正さずにはいられない性格なんだろうなと考えた。
いい加減に解放して欲しい。
そう思っていると、胸のあたりがギュッと締め付けられる。
頭の中は真っ白に近くて、神経が緊張状態だった。
耐えられなくて、膝を曲げて床にしゃがむ。
「おい、そうやっていれば済むと思っているのか?」
まだ説教を続けるのか男の口調は早くなり、より強くなっていた。
男は周りのことなど気にしていないかのように、話を続ける。
サクラは床のタイルを見て、聞こえないように重い頭の意識を感じないようにした。
「ちょっとやめなさいよ、悪気があってじゃないんだから」
助かった。
そう思った。
もう辛くて駄目そうだった。
サクラは顔をあげて、視線が上を向く。
制服を着た背の高い女の子が、男に近寄って説教を止めさせた。
男はキョトンとしたが、すぐにこの女の子に言い放つ。
「俺はこいつに話しているんだ。口出しするな、女が」
暴言だった。攻撃的な口調。
それでも女の子は怯んでいなかった。
「ふん、男のくせに女に威張るなんてミットモナイわね」
「なんだと!?」
サクラは二人が口ゲンカを始めたのを見ておろおろする。。
暴言を吐いた男に女の子は反応してやり返した。
男はそれにキレて、発狂し始めた。
ついに女の子の言い方にキレたのか、男は殴りかかった。
こぶしをつくり、大きく振った腕だった。
サクラは驚く。
釘付けになった。
女の子が男を背負って投げた。
男の体が女の子の頭を通過するように、前に飛ばされる。
腕はつかまれ、バンザイのポーズで床にたたきつけられた。
しばらくして、駅員と警官が駆けつけた。
しゃがんでいたサクラは、駅員に声をかけられ、心配される。
「立てますか?」と聞かれて、「はい」と答えた。
※※※
駅の事務室で、警察官に事情聴取される。
一応被害者だからかいくつか質問されて、最後に「被害届を出しますか?」と言われた。
サクラは「別に大丈夫ですので」と言って断った。
小一時間してサクラは解放される。
事務室を出たところでため息をついた。
辛かったのが解放されたのだった。
災難にあったと感じる。
駅の建物を出ると、自分の体が震えているのを感じた。
男が怒鳴っているのを思い出して、怖くなったのだろうか?
サクラは学校へ向かうために駅を離れた。
【続く】
※作者より※
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
この話を書けて本当に感謝です。
読者の皆様に喜んで頂けるように、頑張っていきますので、今後もよろしくお願いします。
よろしければ☆一つでも頂けると嬉しいです。
感想もお待ちしております。
では。
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