第2話「陳情」
「暴動仮面さん! 今日もよろしくお願いします!」
「ああ、任せておけ」
暴徒のリーダー格である男に我輩は答えた。
「それじゃあ、行きましょうか!」
「うむ。では、役所に赴くとしようか。我輩達の平和の為に」
そう言って我輩は歩き出した。
今回は暴徒達と役所に陳情に行くことになった。先日の打ち壊しによって暴徒達の人気は鰻登りとなり、今ではすっかり街の人気者になっていた。
「おい、そこのお前」
ふと、後ろから声をかけられたので振り返ると、そこにはイカれたデザインの覆面を被った男が立っていた。
「おお、発狂仮面。久し振りだな」
発狂仮面は我輩の知り合いだ。
かつては名うての暴徒だったが、奇声を発しつつ敵味方関係無く殴りまくるので最近は後方支援に徹しているのだ。
「どうだ? 元気にしてたか?」
「まあ、それなりにはね。ところで、何やってんのこんな所で。また、何か悪いことでもしてんのか?」
「いや、実は暴徒のリーダー格の男に頼まれて、この暴徒の活動を円滑にする為に色々と手伝っているのだ」
発狂仮面は感心した口調で言う。
「へぇー。相変わらずだねぇ。でも、そんな事してていいわけ? 君の目的はこの国を乗っ取ることなんだろ?」
「確かにそうだが、それははるか先の話さ。今は目の前の事を全力でやるだけだ。それが、どんなに困難な道であってもな。だから、お前にも協力して欲しいんだが……」
「うん、いいよ。僕に出来る事があるなら何でも言ってくれ。僕はいつでも君の力になるからさ」
そう言うと発狂仮面はどこかへ去っていった。
丸くなったものだな。
我輩達は役所に着くと担当者を呼び、陳情をした。
これで、
数日後……
「暴動仮面殿。この前相談した件ですが…… その、あれですよ。やはり無理みたいでして。すみません」
役人が申し訳なさそうな顔をして言った。
「そうですか…… 仕方ありませんね。では、我々は別の手段を考えます」
やはり、暴徒で自警をせねばなるまいか…。
我輩が思案していると、リーダー格の男が話しかけてきた。
「暴動仮面殿。これからどうしましょう?」
「とりあえず、一度我が家に戻ろうと思うのだが」
「分かりました。皆に伝えてきます」
そうして、その日は解散となった。
一朝一夕ではいかんものだな。
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