新しい片思い

久瀬ゆこ

第1話 世界史の授業

 私__川本さくが、先輩を好きになってから1年が経過した。今は、世界史の授業中にノートを取らず、校庭で楽しそうに体育の授業に取り組む先輩を眺めている。

 1年前に廊下で彼女と楽しそうに話している先輩の姿を見て一目惚れしてしまったのだ。


「またフラれたんすか、こばせん」


 いつもよりはやめに授業が終わったのか、雑談が始まった。

世界史の先生、愛称“こばせん”こと小林悟。話しやすいから多くの生徒と距離が近いがために多くの生徒からナメられている。その多くの生徒の中には私もふくまれていた。


「誰にでも手出すからっすよ」

「違うね。俺の魅力に気づいてないだけさ」格好つけるようにひげを片手でさする。

「50のおっさんが何言ってんだか」

「あ? うるせぇ! このガキんちょが!」男子生徒の肩に腕を回して体重をかける。

「いでで!」


 もう少しでチャイムが鳴ろうとしている中、先生の指示でノートを提出することになり危機を感じた。クラスで私だけ提出していない。

 

「川本~。今日の放課後までに社会科室に提出しにこいよー」

「はーい」指名されて適当に返事をする。


 スマートフォンを取り出して板書の写真を撮っておいた。


「今のガキはすぐスマホ出すなぁ」ため息交じりに愚痴をこぼす。

「こばせん、スマホ持ってないんすか?」

「持ってるぜ。これがないと美人とマッチングできないからよぉ」


 はぁ。少なくとも、こばせんみたいな人は彼氏にしたくないなぁ。

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