賀寿戦隊!エルフレンジャー!!(違

るるあ

第1話!! 88歳、米寿キンチャの目覚め!!


 ここは、エルフの里。

 異世界から舞い降りた勇者ヨシノリが、晩年を過ごした地である。

 この里で嫁の一人であるエルフと、もう戻れない故郷で主食であったコメを作りながら、慎ましい?生活を送ったとされている。


 ヨシノリが亡くなって、はやウン千年。

 今や伝説となっている勇者の血を繋いだ少年?青年?ヨシノリ三世は、本日で88歳になる。

先祖代々引き継いだ水田の作業中に、ふと考え込んだ。


 「そう言えば、今日はご先祖さまの手記にあった、88歳米寿の誕生日だけど…あの記述通り、何か起こったりして。」


 「おーーーい!ヨシノリ三世ーー!納品だどー!!」


 ドスドスドス!!土煙を上げて、近所のゴブリン村からゴブ助がやって来た!


 「あっゴブ助!マンドレイクだな?いつも助かるわ〜!ゴブリンはすげーな、引き抜く時の声平気なんだろ?おれ倒れた事あるんだよな!

 ところでさ、嫁に行った姉ちゃんは元気でやってる?まだクッコロ遊びやってんの?ウザかったらしばいていいからな?」



 …その時、響き渡る声があったッ!

  


 ♪ぱらら〜ぱららっばっぱっぱ、ぱららー♪

 どうやって再現したのか、黒子装束が某仕置きをする時代劇テーマ曲をラッパで吹いているッ!

 それをBGMに現れる、9人の戦士たち!!


 《61歳、還暦レッド!!

 《66歳、緑寿グリーン!

 《70歳、古希パープル!

 《77歳、喜寿ムラサキ!

 《80歳、傘寿ゴールデンブラウン!

 《90歳、卒寿ホワイト!

 《99歳、白寿シロ…

 《100歳、百寿ピーチホワイト!


 十二支を巡りし戦士が、悪を撃つ!

 賀寿戦隊!エルフレンジャー!!》》


 ばっちりポーズを決めた彼らの背後に、爆炎が巻き起こるッッ!!

 安心して下さい!幻影魔法なので森は無事ですよ!!



 「助けに来たぜ、88歳米寿キンチャ!」

 赤いマントの61歳還暦レッドが、仲良く話していたヨシノリ三世とゴブ助の間に割り込んだ!!

 空気を読まず、華麗にウインク!!


 「なんだーあんたらは?」

 無垢な瞳で、9人を見つめるゴブ助。ちなみに、ヨシノリ三世は盛大に引いている。


 「私達は、賀寿戦隊!エルフレンジャー!エルフを陵辱するゴブリンは許さないわよ!」

 エルフレンジャーの紅一点、ベビーピンクのマントを靡かせた、100歳白寿ピーチホワイトがゴブ助を睨みつけるッ!


 そしてエルフレンジャーたちは、ヨシノリ三世をゴブ助から護るように取り囲み、それぞれ戦闘ポーズをキメているッッ!

 ゴブ助は何だか楽しそう、こちらを見つめている!


 ヨシノリ三世は理解した。してしまった。

 これ、勇者様が残した手記の、厨二病最高!ページのやつだ…


 すごくめんどくさい…

 つーか、あの厨二病ゴッコ遊び、信じる人居たんだ…引っかからなかったのおれだけ?マジで?

 種明かしのページ、結構わかり易かったけどな…みんな脳筋寄りの村の人なのかな…。


 「あの、ゴブ助はおれの親友かつ義兄なんで、悪ではないんですけど…」

 リーダー?っぽい還暦レッドさんに、そっと伝えてみる。


 「なんということだ!米寿キンチャは操られているのか!?」

 「むむっ!許すまじ、ゴブリン!!」

 「よし、レンジャーフォーメーションを組んで作戦会議だ!!」


 説明しよう!レンジャーフォーメーションとは、全員で円陣を組み、次に繰り出す技を相談…打ち合わ…ええと、威力増幅の為にパワーを溜めるのだッッ!



 …思い込みって怖いな。なんか勝手に離れてくれたので、今のうちにゴブ助と合流しておこう。


 全く話を聞いて貰えそうにないし、ゴブ助に協力してもらって、アレで行こう。手記の“やり過ごす極意”ページ、熟読しててよかったよ。


 「ゴブ助、この人たちアレだ、昔みんなで遊んだ“厨二病ゴッコ”を拗らせちゃったみたい…」

 「ぅえ?うちの息子ももう卒業したのに、まだやってんのか!純粋なんだなー。」


 「だから、適当に付き合って納得してもらおう。このページなんだけど…」

 収納スキルから、勇者様の手記を取り出して見せる。

 「ああ、懐かしいなぁ〜!

 うんうん、解った!おらの演技力が火を吹くぞぉ!」

 「あはは!巻き込んじゃって悪いけど、よろしく!」



 エルフレンジャー?たちはいい案が浮かばないらしく、こちらをチラチラ見ながら必殺技を何にするべきか揉めている。


 よし、やってみよう。おれは芝居がかった大きな声で呼びかけた。

 「みんな、聞いてくれ!ゴブ助は僕の友達なんだ!!」

 「ぷるぷる、ぼく悪いゴブリンじゃないよ〜!」

 ゴブ助演技派だな!ちゃんと弱々しく見える。


 「なんということだ!勇者様が残した伝記にあった通りではないか!!よし、仲良くしような!私達は弱い者の味方だ!!」


 よし、奴ら乗ってきた!

 クッソ恥ずかしいが、たたみかけよう!

 「エルフレンジャーのみんな!僕は米寿キンチャとして、この里でゴブ助を守っていきたいんだ!ここに残ることを許してくれ!!」


 「そうか!弱い者を守るのはヒーローの在るべき姿!米寿キンチャの崇高な意思を尊重しよう!!」

 「そうね!…さっきは酷い事を言ってごめんなさい。あなたは今から、私達の友達よ!」

「「「「そうだそうだ!」」」」


 最後は皆で握手ッッ!!

 こうして、また一つエルフの里に平和が訪れたのだったッッ!

 ありがとうッ、エルフレンジャー!!

 次は君の街を訪れるかもしれないぞッ!


 

 


 「「チョロすぎ」だな」 

 彼らが去った後、おれはなんだかすごく疲れたのだった。


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