第19話 チーム結成
「おー! 来たね有名人」
次の任務の場所にたどり着くと、退魔師が2人すでに待っていた。
「?? 有名人ってどういうことですか?」
「アバドンを祓魔した男って教団内で噂になってるよ。」
入院してからここに来るまで、教団に立ち寄ることがなかったからそんなことになってるなんて知らなかった。
(”忍"のソラ君は教えてくれなかったな。)
「そうだったんですね。 まあ、まぐれですけど・・・
それにしてもここは暑いですね。汗が噴き出します。」
ここ盛夏島は年中真夏の気温であり、住人もあまり多くはない。
ただ、鉱山の町で教団にとっては守るべき島となっている。
「そのうち暑さにも慣れるさ。 さて、全員そろったし、まずは自己紹介からね。 私は”渚”。 ”なぎさ”お姉さんと呼びなさい。」
赤く長いきれいな髪をなびかせて、スタイルの良いその女性はポーズをとって決め顔をした。
(こんな感じだけど幹部であるオフィサーで、すごい人なんだよな・・・)
「何とか言いなさよ。あんたたち。
まあいいけど。 次はエル。あんたよ。」
なぎさお姉さんは隣にいた僕と同い年と20くらいの退魔師の方に話を振った。
「・・・私は"エル”」
無表情で語るその退魔師は僕と同期で、双子の退魔師の姉。
退魔師の認定試験でもトップクラスの成績で合格したからよく覚えている。
「・・・うん、じゃあ有名人くん」
「はあ。 イチです。 よろしくお願いします。」
「ところであんたたちは同期だけど仲良くないの?」
「あ、そうですね。 エルさん久しぶり。覚えてるかな??」
恐る恐るエルと自己紹介した女性に尋ねた。
「・・・ごめんなさい。 覚えてないの。」
「だよね。」
(相変わらず無表情で何考えてるかさっぱりだな。)
「まあ、エルと仲良くなるのは大変だね。 私もまだまだだし。」
苦笑いしつつ話すなぎささんの様子から2人はコンビで行動しているようだった。
「あとは"忍”の子ね。よろしく。」
僕の後ろにいたソラ君はぺこっとお辞儀をした。
「自己紹介も終わったところで、任務について認識合わせをするわね。
連絡が行ってないように、この任務はノーコード扱いなの。」
ノーコードとは、教団職制のオフィサーが上層部を連絡を取らず、独自で任務を行うことで、秘密裏に行いたいときに使われる。
「今回の任務は人物の護衛。 ターゲットはこの鉱山の管理人である”ヤマト”さん。 彼を守ること。」
「?? 最近悪魔が現れた報告が上がったのですか???」
(この鉱山は人口少ないし、渚さんがいれば十分だけどなぜ護衛・・・?)
「いや、確定した情報はない。 ただこの1か月観光客がふたり行方不明になったの。 この鉱山は教団発足時からの契約で、ここを守る必要があるの。
ここを守るのを保証して、優先的に鉱山資源の供給をしてもらってるからね。
そこで、表向きはエル一人で彼の護衛にあたり、秘密裏に私と君で調査をするの。」
「調査ですか・・・?」
「うん。 彼はなにか隠してる。そもそも今回の任務は護衛のみで、子供も鉱山の事故死で処理されたようなの。 忍の調査は拒否している。」
「この鉱山がグルになって何かを隠しているかもしれないってことですか。
わかりました。」
「じゃあエル。 あんたはこのまま護衛対象のもとへ向かって。」
彼女は、了解しましたとだけ答えて、一瞬で姿を消した。
「さて、私たちは聞き込みに行こう。」
僕たちは人気のない海岸から、島の内側へ進んでいった。
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