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 周囲のほぼ全てのビルの屋上には神社が有った。

 そのビルにも和風の意匠。玄関は明治以前の日本の建物を思わせるモノで、窓やベランダにも和風のひさし

 和風の意匠と言っても……良く見ると仏教その他の「日本に古くから有る神道系以外の宗教・民間信仰・呪術」に関する意匠は、注意深く排除されているように思える。

 街角には神道風の祠。……その祠から「死霊」系の気配がする。多分、この町を仕切っている死霊使い達の「使い魔」なのだろう。

 まるで、昔のアメコミや外国のB級映画みたいな「外国人受けしそうな勘違い日本」だ。

 「従業員」らしい連中は……女はオタク受けしそうなアレンジがされた巫女服、男は神職をイメージしたらしい白っぽい和装。

 「客」は……まぁ、ポリコレに配慮したような多様な人種だ。白人・アフリカ系・インド系・中東系・東南アジア系……。

 ただ、排除されてる奴らも居る。

 東アジア系らしい「客」が話してるのは……中国語か韓国語。

 右翼系呪術結社が支配する町にも関わらず……観光客に「日本人」が異様に少ない。

 力をほぼ失なったとは言え……俺は、まだ、魔力・霊力のたぐいは感じられる。そして、感じ取れるのは……不健康極まりない「気」。

 バイオテクロノジーで生み出されたと云う年中花を咲かせる桜の木に手を触れ……。

 嫌な「気」だ。

 たしかに、あと数年枯れずに済めば御の字だろう。

「長く居たくねえな、ここは……」

「まぁね……。でも、目的のモノを見付けるまでは……ここから出てもらう訳には行きませんよ」

「で……目的のモノは、どこなんだ?」

「じゃ、案内しますよ」

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