赤い空

ユラカモマ

赤い空

 戦争が終わる2、3日前隣の市が空襲で焼かれて西の空が夕焼けのように赤く染まったらしい。幼い頃実感なく聞いたその光景を近頃夕焼けを見るたび思い出す。祖父母がまだ達者だった頃私は幼くて祖父母の話す昔の話にまるで興味がなかった。私の知る世界と違う世界の話を理解できぬままに聞き流していた。

 大人になって自分の当たり前が当たり前じゃないと知った頃祖父が亡くなった。ずっと故郷の人の為に働いて働いて最後は自宅のこたつで眠るようにして亡くなった。今時家でこんなに安らかに死ねるなんて徳を積んだおかげだと祖父の兄弟は言った。まぁ確かに今時分自宅でぽっくりなんて客観的にみて難しい死に方だとは思う。ただ何となく受け入れ難かったのは死というものをまだ受け入れきれていなかったからだろうか。親戚が多くなくあの頃は死というものが今よりまだ遠くにあるような気がしていた。

 戦争があと数日続いていたら私の育った町も空襲で焼けていたらしい。もし今元気だった頃の祖父母にもう一度会えたなら私は祖父母の話に耳を傾けるのだろうか。それでも多分今の私にとっても祖父母の話はまだ遠い異世界の話のように感じられるだろう。だって私はまだ祖父母の3分の1も生きていないのだ。まだ死ぬのは遠い先のことだと無闇に信じていたいのだ。それがそう信じられたものではないことも最近分かってきてしまってはいるのだがまだ遠く離れたものであって欲しいと思う。誰もが夕焼けをただ綺麗だと見える、そんな世界になれと思う。

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赤い空 ユラカモマ @yura8812

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